カズオ・イシグロ

日の名残り

品格ある執事の道を追求し続けてきたスティーブンスは、短い旅に出た。美しい田園風景の道すがら様々な思い出がよぎる。長年仕えたダーリントン卿への敬慕、執事の鑑だった亡父、女中頭への淡い想い、二つの大戦の間に邸内で催された重要な外交会議の数々―過ぎ去りし思い出は、輝きを増して胸のなかで生き続ける。失われつつある伝統的な英国を描いて世界中で大きな感動を呼んだ英国最高の文学賞、ブッカー賞受賞作。

日の名残り (ハヤカワepi文庫)
日の名残り (ハヤカワepi文庫)カズオ イシグロ Kazuo Ishiguro

早川書房 2001-05-01
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参考レビュー

深い余韻につつまれる見事な傑作

以前読んだ「わたしを離さないで」も、相当良い作品だった。 新しい米国人の主人に仕える老いたスティーブンス。 作品を貫く品格。 多くの使用人たち。 出入りする人々。 ミス・ケントンからの手紙。 よく錬られた構成。 ソールズベリーの館。 英国の執事が主人公である。 見事な傑作である。 それだけの事はある。 プロフェッショナリズム。 カズオ・イシグロの3作目の長編である。 面白いとか、エキサイティングだとか、泣けるとか、そのようなのではないかもしれない。 素晴らしい作品だった。 かつて執事であった父親。 2つの世の中大戦と館での出来事。 素敵夕暮れ。 登場人物たちの微妙な心の揺れをとらえた緻密な描写。 途中で立ち寄った地の人々との交流と過去の回想がクロスオーバーしながら、物語は淡々と進む。 車で旅に出たスティーブンスは、長年仕えたかつての主人であるダーリントン卿のご時世に想いをはせる。 ミス・ケイトンとの受け応え。 ただし、読み終えて、静かだが、確かで、深い余韻に包まれた。 この作家は将来的にノーベル文学賞をとるだろう。 1989年にブッカー賞を受賞したという。

ストーリーはもちろんながら、その文章の読みやすさが素晴らしい。

実際は主が替わってしまい米国人の富豪に雇われています。 そのスティーブンはささやかなきっかけで、屋敷のスタッフのリクルートも兼ねた小旅行に出掛ける事になります。 なお在りし日のミス・ケントンがスティーブンに突っかかっている姿も。 何も腹積もりず、ただ読むだけで物語が頭に入ってきて、気付いたら読み耽っています。 言うまでもなく物語も素晴らしいです。 私は実際でもスティーブンが豪奢なホールで執事として業務を全うしている姿が容易に想像できます。 外国小説の翻訳らしい記事がウィークポイントとか、もしくは読書そのものがウィークポイント、という人は結構いると考えますが、この小説にその不安はないのです。 主人公は執事の中の執事 スティーブン。 その中で思わず自身本人の生涯を見つめ直していき……とまあ、そうしたお話なのですが、例えるなら現実にスティーブンという執事がいたのではないかと思ってしまうほど、この小説の世の中は緻密で慎重な空間を感じます。