司馬 遼太郎

燃えよ剣〈下〉

元治元年六月の池田屋事件以来、京都に血の雨が降るところ、必ず土方歳三の振るう大業物和泉守兼定があった。新選組のもっとも得意な日々であった。やがて鳥羽伏見の戦いが始まり、薩長の大砲に白刃でいどんだ新選組は無残に破れ、朝敵となって江戸へ逃げのびる。しかし、剣に憑かれた歳三は、剣に導かれるように会津若松へ、函館五稜郭へと戊辰の戦場を血で染めてゆく。

燃えよ剣〈下〉 (新潮文庫)
燃えよ剣〈下〉 (新潮文庫)司馬 遼太郎

新潮社 1972-06-01
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参考レビュー

華麗に舞う剣。

決して折衝する事もなく、胸の内を明かさなかったような感じがします。 もしくは、出世欲もなく、一徹の思想を貫く事もなく、単に喧嘩好きだったのかもしれません。 それと、孤独であった事。 それも、武士たる心得なのかもしれません。 単なる喧嘩好きが、和泉守兼定という刀を帯びたために、その剣の作用により、士気を強め、後世にも名が残る人物として成り上がったのかもしれません。 いつの事例にも笑顔はまったくなく、強烈で厳しく鋭い眼光が伺えます。 近藤勇、沖田総司などといった創設者との友情の義を重んじ、鳥羽伏見の戦いから函館五稜郭までの戊辰戦争をたったひとり戦ってきたような感じがすごくします。 名もなきものが、「新撰組」という徒党を組んで、幕末の動乱期に、特段の思想もなく、ただやみくもに、ただひたすらに、勇ましく吠える狼のごとく、天下を震撼させる大名クラスにまで成り上がった次第ですが、その新選組副長たる土方歳三は、何故か一匹狼のごとく感じてしまいます。

思想的背景抜きに戦い抜いた土方の生き様は美しい

尊皇思想の元になる南北朝ご時世の内、南朝を正当とする見方では楠木正成を英雄と見る。 賊軍になる事を異常におそれしていた。 けれども幕末期や第二次大戦前まではよく知られた人物であり南北朝ご時世のうち南朝を正当とする思想が日本のストーリーの上で思っている以上に影響力を持っていた事はあまり知らず読んでいる中で学習になった。 土方歳三の生涯を描いている。 司馬遼太郎氏によるストーリー小説。 教科書や大河ドラマなどでもあまりこの件は言及されてないからだろうか。 下巻では七里研之助との闘いから函館、五稜郭に至るまで。 作中では無愛想な人間として描かれる事が多々ある。 なぜ自らは現在までにこういった思想背景を知らなかっただろう。 中でも徳川慶喜があんだけに戦争にネガティブであった所以が水戸学を深く学び尊皇思想が強かった事だ。 近藤勇もその点は同じであった。 その楠木正成は現代ではそれほどメジャーなストーリー人物ではない。 ただし司馬遼太郎はよく研究した上で作品を生み出している。 だが、斎藤一や市村鉄之助を北海道の戦場から強制的に脱出させる事にも土方のあたたかみが見えるようだった。 そういう政治思想とはほぼ無関係に生き抜いた土方歳三が不必要に輝いて見えてくるのだ。 ストーリー小説であるので、すべてを歩み書として受け入れる事は良くないだろう。