有栖川有栖

女王国の城 上

ちょっと遠出するかもしれん。そう言ってキャンパスに姿を見せなくなった、われら英都大学推理小説研究会の部長、江神さん。向かった先は“女王”が統べる 聖地らしい。場所が場所だけに心配が募る。

週刊誌の記事で下調べをし、借りた車で駆けつける―奇しくも半年前と同じ図式で、僕たちは神倉に“入国”を果た した。部長はここにいるのだろうか、いるとしたらどんな理由で―。

女王国の城 上 (創元推理文庫)
女王国の城 上 (創元推理文庫)有栖川 有栖

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参考レビュー

最後の最後にすべて綺麗にクリアーになる醍醐味

作中に大量にちりばめられた謎の数々が、最後の最後にすべて綺麗にクリアーになる、という構成自体、ミステリの王道とも言えるでしょう。有栖川(の長編)作品は、徹底してロジックを埋めてくるので、読んでいてとても安心だ。)そもそもミステリ研が事件に絡むきっかけとなった江神さんの謎の行動についても、最後にはその理由が明らかになる。作中でもチラッと触れられるが、そう、アレが普及してしまっているとこの話はほとんど成り立たないのだ。それはそれである意味不幸なのかも。

文庫で上下巻の2分冊。バブル崩壊前夜という時代設定も巧みだ。岐阜の山奥の新興宗教本拠地にそびえる「城」を巡って、謎また謎の連打、殺人につぐ殺人が巻き起こるのを、江神さんがばっさり!と解き明かすのだ。

(言い方を変えると、その時代を経験したことのない若い読者だと、この作品の世界に没入できないかも知れない。時代はバブル崩壊前夜ごろ。そういわれれば確かに○○の言動とか、やたらめったら不自然なんですよねー。このシリーズの長編は前作発表から10年以上たっていて、なかなかスゴイ状態ではある。

うぅ、そんな伏線でしたかー、完全にやられました。あー読んでよかった・・・と心から思える出来ですね。物語のかなり冒頭から、とある事情で警察が事件に介入できない状況が発生、やむを得ず江神さんほかミステリ研の面々が謎に挑むのだが、、、と、この設定自体について当初、ありゃりゃそんな安直な「嵐の孤島」状況ですかぁ、と思ってしまった私は相当浅はかでした。江神次郎シリーズ(学生アリスシリーズともいう)の第4弾である。

長さが苦にならない大力作長編。

私はとくに、事件解決後にそれまで未解決だった謎が明かされるエピローグが面白いと思った。(ただ、その場合その犯人は後の2つの殺人ではアリバイがあり、共犯者がいない限り成り立たない推理ではあったが)しかし、本書には上記に掲げた他にも盛りだくさんな謎がちりばめられ、それらが完全に論理の道筋の中に当てはめられていくのが面白い。江神部長シリーズ、あるいは学生アリスシリーズの第4作である本書、前・後編合わせて800ページ強という大長編だが、読んでて長さが苦にならない。

本書は、3つの「読者への挑戦状」を差し挟んだ前作「双頭の悪魔」の凄さや、その前の「孤島パズル」の論理の精緻さと比べると、やや劣ると思う。例えば、11年前の密室殺人の謎解きは謎解きと言うには苦しいと思うし、3つの殺人のうち第1の殺人だけなら、江神部長の推理とは別の論理的な解決を考えることもできた。そしてそもそも、江神部長は何のために「人類協会」を訪れたのか。

前半はゆったりとした展開だが退屈せず読み続けられた。それも作者の語り口の上手さ所以か。

果たして犯人は誰か、また警察を呼ばずに自分たちで犯人を突き止めようという「人類協会」の背後に隠された秘密は何か。新興宗教集団「人類協会」の本部内で発生した連続殺人、その中で軟禁状態に置かれたアリスたち。