浅田次郎

天切り松 闇がたり 1 闇の花道

「殿下閣下もかまいやしねえ。盗られて困らぬ天下のお宝、一切合財ちょうだいしようじゃねえか」目細の安吉親分の新たな旅立ちを描く「闇の花道」等、帝都の闇を駆ける伝説の怪盗たちの物語5話。

闇の花道―天切り松 闇がたり〈第1巻〉 (集英社文庫)
闇の花道―天切り松 闇がたり〈第1巻〉 (集英社文庫)浅田 次郎

集英社 2002-06-01
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参考レビュー

江戸の香りと大正浪漫

浅田次郎の人気短編シリーズ。また作品には山県有朋、永井荷風といった実在の人物も登場する。そしてそういう世でも義理人情を重んじ、粋を愛した人々の生き様には、ほれぼれとさせられる。15年足らずという短い年月ながら、激動の明治と戦争へと向かう昭和に挟まれ、市民文化が華やかだった頃。

もともと徳間書店が出版していたが、後に集英社が引き継いでシリーズ化した。泥棒の話と聞いて良い印象を持たないかもしれないが、義賊をイメージしてもらいたい。1912(大正12)年の関東大震災で東京…当時は「都」ではなく「市」だった…が灰になるまでの、束の間のきらめき。

特に「おこん」は男が理想とする女性像と言ってもいいだろう。著者自身も非常に気に入っている作品らしい。1巻では「槍の小輔」と「百万石の甍」がおすすめ。

古いものが否定され新しいものがもてはやされる風潮は、1980年代末のバブル期を思わせる。物語の主な舞台となる大正は、日本の近代史の中でも興味深い期間だ。目細の安、強盗の説教寅、ゲンノマエのおこん、黄不動の栄治、百面相の常……登場するのは、いずれも魅力溢れる人物だ。

粋はグっときます。

ラーメン屋で読んでいたオイラは鼻水すすってんだか、ラーメンすすってんだか解らなくなりましたよ。男性にも、女性にも、是非読んでもらいたい粋な物語。物事、筋が通ってる。これは見事にやられたなぁ。

ただそれだけで、素晴らしい。ある意味、禅問答のようなものなのだ、この話。全編の内容もホントにすばらしいけど、物語の奥に活字には表してない事情を連想させる手法にも見事にハマります。羨ましい生き方。

忘れちゃいけない心粋というものがあるのだな、と。それを思うだけでも目頭が熱くなります。

今の時代になかなか見つけにくい人情を感じることができます。ぐいぐい引き込まれる天切り松の闇がたり、実際に聞いてみたいもんです。さらに私的見解ですが「衣紋坂から」の松が語る最後のシーン浅田次郎さんの洒落がきいています。