太宰治

女生徒

「幸福は一夜おくれて来る。幸福は、―」。女性読者から送られてきた日記をもとに、ある女の子の、多感で透明な心情を綴った表題作。

名声を得ることで破局 を迎えた画家夫婦の内面を、妻の告白を通して語る「きりぎりす」、情死した夫を引き取りに行く妻を描いた「おさん」など、太宰がもっとも得意とする女性の 告白体小説の手法で書かれた秀作計14篇を収録。

作家の折々の心情が色濃く投影された、女の物語。

女生徒 (角川文庫)
女生徒 (角川文庫)太宰 治 梅 佳代

角川グループパブリッシング 2009-05-23
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参考レビュー

知られたくない気持ちと気付いて欲しい気持ち

自分を知られたくない気持ちと、誰かに気付いて欲しい気持ち。しかし、こうした何気ない主人公の自意識に触れると、自分しか知らない自分がいるということもまた大切なことだと感じさせられます。

成長していく中で、人は社会からの視線や評価を免れることはできません。表題作の女生徒は、少女の成長への戸惑いや、社会への違和感を少女の何気ない一日の中で表現した作品です。

読むと「これ自分のことだ…!」と思わずにはいられないのが太宰作品の魅力ですが、この作品も思春期のただ中にある人や、思春期を通り過ぎた人なら誰でも強くシンクロしてしまう内容となっています。この二つは表裏一体なのかもしれません。

主人公の少女は、自分の下着に薔薇の刺繍があることを誰も知らないという、自分だけの秘密に優越感を持っています。

いつのまにか流れてゆくもの

すごく大事なとことがわかった気がするのにあらためて振り返ってみても思い出せない…。私はお米を研ぐのが好きなのですがさりさりとお米を撫ぜながら水を流しているとどんどん心がまっしろになっていってでも何かぼんやりと考えています。表題作の「女生徒」はまた際立っています。

他の作品とはちょっと違う雰囲気があるので太宰はいまいち…と思っていた人も手にとってもらいたいです。そんなふうに一瞬一瞬にたどり着いている透明でかたちないものを文章で書ききっているのです。

日常の生活の中で、何の脈絡もないように生まれては消えていく感情。その一瞬には確かにあるのに、あったことをちゃんと知っているのに、いつのまにか流れて見えなくなるものが書かれている。やはり太宰はすごい。

女性の独白の物語を集めたもので、どれもいいのですが…。太宰治は好きな作家ですけれどもこれは数々の有名作をおさえて、傑作だ!と思っている短編集。ある一人の女生徒の朝から夜までのお話。