江國香織

抱擁、あるいはライスには塩を

三世代、百年にわたる「風変わりな家族」の秘密とは―。東京・神谷町にある、大正期に建築された洋館に暮らす柳島家。

ロシア人である祖母の存在、子供を学 校にやらない教育方針、叔父や叔母まで同居する環境、さらには四人の子供たちのうち二人が父か母の違う子供という事情が、彼らを周囲から浮いた存在にして いた。

抱擁、あるいはライスには塩を
抱擁、あるいはライスには塩を江國 香織

集英社 2010-11-05
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参考レビュー

個人の思い出が集まり紡ぎだされる大家族の物語

江國氏の作品は読んだことがなかったし取り立てて興味もなかったが、週刊ブックレビューの合評を聞いて興味が湧き手に取った。同じエピソードであっても語る人によって受け止め方や人物評価が異なるところが面白い。

柳島家は冒頭の1982年の段階で4人の子供がいるが、長女は父親が異なり、末っ子の二男は母親が異なるといった具合に、それだけでも複雑な家族構成になっており、加えて独身の叔父・叔母や祖父母が同居しており、総勢10人以上の視点から各々の人生や家族にまつわるエピソードが語られる。ただ、それぞれの人物の特徴と家族構成が呑み込めると、その後は物語に溶け込めるようになった。そして、そんな個人が集まって構成される家族という集団のありがたさと儚さを感じた。

柳島一族あるいは彼らと拘った人が交互に独白スタイルで語るが、時代が1960年と2006年の間を行ったり来たりするし、登場人物の関係が複雑なので、最初は頭が混乱した。このような複雑な構成とキャラクターを書き分ける著者の力量に脱帽した。本書は柳島家という大家族の歴史を約50年に亘って描いた大作だ。

構成は独特。また、傍から見れば気難しく人付き合いが嫌いな人であっても、その裏側には最も親しい家族にさえ打ち明けていない辛い経験があるというように、人には各々の個人史があるのだなということを今更ながら実感させられた。

最近の作品の中ではベスト

値段は張りますが、手元に置いて損のない本です。年末年始にまたじっくりと読み返そうと思います。スイートリトルライズあたりから???と思い始め、だんだんと当りはずれが出てきて読んでよかったっていう本と、よまなきゃ良かったという本と両極端の感想になることが多かったのですが、今回は素晴らしかった。

ある家族の物語という説明だったので江国さんの書く家族の物語なら間違いないかもと中身を見ず購入しました。今回はそれが大正解で、最初から最後までじっくりと味わって読み続けられました。物語の後半で秘密の事実がさりげなく明かされたときに、推理小説のように「はっ、そうだったのか」とその事実にとっても驚かされます。

時間軸があちこちいって、その一家の色々な人が一人称となり物語を語りかけますが、どの人も個性があってとても面白かった。じっくりと味わってっていうのが江国さんを好きな方ならよくわかると思います。紡ぎだされる文章を味わいながらじっくりとゆっくりと楽しめます。

これから何度も何度も楽しめそうです。初期作品からずーっと新刊が出るたびに江国さんの本を読み続けています。