福井晴敏

終戦のローレライ 上

第2次大戦末期、主人公の海軍新兵・折笠征人は、未だ知らされぬ任務のため親友の清永と広島の呉軍港に降り立つ。そこでは、1隻の潜水艦が彼らを待ってい た。

その潜水艦こそは、戦争の形態を根本から変えてしまうという秘密兵器「ローレライ」を搭載していたドイツ軍のUボートだった。

しかし、日本に到着する 前、アメリカ軍の執拗な追撃のために「ローレライ」はやむなく日本近海に投棄されてしまっていた。折笠たちに与えられた極秘任務とは、それを回収すること にあった。

それを阻止せんとするアメリカ軍とのあいだで苛烈な戦闘が繰り広げられる。そして、その秘密兵器を日本の終戦工作に使おうとする陰謀が、密かに 進行していた。

終戦のローレライ 上
終戦のローレライ 上福井 晴敏

講談社 2002-12-10
売り上げランキング : 422667

Amazonで詳しく見る
by G-Tools
終戦のローレライ 下 亡国のイージス 川の深さは (講談社文庫) 亡国のイージス 上 (講談社文庫) 亡国のイージス 下(講談社文庫) さよなら神様 その女アレックス (文春文庫) 蒼穹のローレライ (Holly NOVELS) 碧のかたみ (Holly NOVELS) 彩雲の城 (Holly NOVELS)

参考レビュー

冷めない興奮

あまりの長さに読んでいて苦になってしまう人がいるかもしれませんが、それを補ってあまりある登場人物達の迷いと決意と行動とが、思わず彼らに感情移入せずにはいられない魅力を放っています。そうしたら、あとは一気に読み終えるだけでしょう。日本とは、国家とは何か。

私は著者である福山晴敏氏について何も知らなかったのですが、「人生の中で、この本に出会えて良かった」と感じ、この作品を是非色々な人に勧めたいと思います。本の内容に関しては敢えて触れませんが、数え切れない登場人物が数え切れない思いを錯綜させる姿、その一つ一つを決してなおざりにしない著者の真摯な姿勢がとても印象的で好感的です。

戦争とは、平和とは何か。著者の戦争観に関して思うところがある人も、一度読み終わった後、きっと時間を置かずにまた隅から隅まで一読したくなるほど、内容の詰まった作品です。生とは、死とは何か。

読後3日間、色々な意味で本書の余韻が抜けませんでした。重くなりがちなテーマ(実際重いですが)と問題を提起しながら、きっちりエンターテイメント性を持っているのもまた本書の魅力の一つ。

映画版は忘れましょう

主役メカの潜水艦も鹵獲兵器という以外は何の特徴もない、ただの潜水艦です。初めにお断りしますと、映画と小説はまったくの別物です。難しいことはぬきにして、とにかく楽しむ1冊です。映画のなりたちは、解説本に書いてありますが、要するに樋口版「ローレライ」と福井版「ローレライ」という関係です。

話題作ですので、映画「ローレライ」をご覧になった方も多いかと思います。戦闘シーンでのハラハラドキドキ感や最後まで息もつかせない展開はエンターテインメントとして文句なく傑作と言えます。映画だけご覧になった方は非常にもっいない。ただ、これをもって日本人としてのアイデンティティ云々というのは考えすぎでしょう。導入部分は一見とても重厚で暗い話なのですが、読んでいくうちに前記の少女がでてきたり、登場人物たちが熱く語りだしたりと「そういう」話なんだということが納得できてくると思います。

小説版を読むことを強くお奨めします。登場人物はみな背負っている暗い過去がきちんと書き込まれています。なお、福井作品の常として、導入部分が長いです。ご注意を。しかし、馬鹿馬鹿しさを作者も読者もわかっていながら、共犯関係をもって楽しむというのが、この小説の楽しみ方です。

さて、肝心の中身ですが、ドイツの秘密兵器が超能力をもった少女で、潜水艦に閉じ込められた彼女を救出し、その能力で米軍太平洋艦隊と戦っていく、という荒唐無稽かつオタクでもハズかしがるだろう狙いすぎの設定の話です。ですからもちろん、設定はとてもリアリティをもたせています。映画は小説の面白い部分をばっさりと切り落としてあり、アッケラカンとしすぎています。そこを苦心して戦っていく姿にカタルシスがあります。