船戸与一

猛き箱舟(上)

あの「灰色熊」のような男になりたい。香坂正次は胸に野心を秘め、海外進出日本企業の非合法活動を担うその男に近づいて行った。彼に認められた正次の前に は、血と暴力の支配するアフリカの大地が開けた。

その仕事は、砂漠の小さな鉱山を、敵の攻撃から守ることだった―人の世の地獄、野望と絶望を謳いあげた大 ロマン。

猛き箱舟〈上〉 (集英社文庫)
猛き箱舟〈上〉 (集英社文庫)船戸 与一

集英社 1997-05-01
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参考レビュー

読まずに死ねない

週間プレイボーイに連載中(約25年前)から目をつけていて、単行本が出て、すぐに買い求めた。だから、初読は、20年以上前になる。

よく、無人島に行くなら、何を持っていくかという問いがあるが、私ならこの作品を持っていく。この作品以降、作者自身の手になるものを含めさまざまな冒険小説が世に出たが、この作品を上回る作品にはお目にかかっていない。

それから何度読み返したことだろう。

冒険小説とは何か、ビルドゥングスロマンとは何かを私に叩き込んでくれた小説である。

すごい冒険小説

言わずとしれた、日本の冒険小説の第一人者である作者だが、本作品は、その作者を代表する一作だと思う。「坊や」とよばれた青年が、戦いをくぐり抜け、様々な死を経験することで「死人のような目をした男」に成長(変貌)していく様は、圧巻である。

1986年3月、隻腕の殺し屋を追う警視庁特殊処理班のシーンから始まり、舞台は1984年の日本にもどる。しかしそこで思いがけない裏切りが起こる。そして戦いの地サハラへ。

彼にあこがれる香坂正次は、かれの配下に加わることに成功し、アフリカの砂漠において、日本企業の隣の採掘権を確保するべく奔走する。ミステリーの中で、特に冒険小説を好きな人は絶対に読み逃してはならない一冊と思う。わずか2年の間に凝集された、壮絶な復讐の物語である。

海外での日本企業の活動を阻害するすべての物を排除する「守護神」・「灰色熊(グリスリー)」こと隠岐浩蔵。本作品は1987年の文春のミステリーベスト10で堂々第一位を獲得した。