灰谷健次郎

兎の眼

大学を出たばかりの新任教師・小谷芙美先生が受け持ったのは、学校では一言も口をきこうとしない一年生・鉄三。

決して心を開かない鉄三に打ちのめされる小 谷先生だったが、鉄三の祖父・バクじいさんや同僚の「教員ヤクザ」足立先生、そして学校の子どもたちとのふれ合いの中で、苦しみながらも鉄三と向き合おう と決意する。

そして小谷先生は次第に、鉄三の中に隠された可能性の豊かさに気付いていくのだった…。学校と家庭の荒廃が叫ばれる現在、真の教育の意味を改 めて問いかける。すべての人の魂に、生涯消えない圧倒的な感動を刻みつける、灰谷健次郎の代表作。

兎の眼 (角川つばさ文庫)
兎の眼 (角川つばさ文庫)灰谷 健次郎

角川書店 2013-06-15
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参考レビュー

再読しました

テレビ世代の私にとって、世の中は白と黒しかないと思っていた青年期がありましたが、中年の今となって、やっと「割り切れる」ものはほとんどないということが分かるようになってきました。小谷先生の家庭生活と学校生活の対比はモノやお金や数字に振り回されている私達に考えるヒントをくれているようです。この物語には必要ない部分かもしれませんが。「考える」こと「多面的にみる」こと「愛する」ことのすばらしさ。そして負の経験の大切さを痛感しました。

灰谷さんの作品について賛否があるようですね。意気揚々と執筆されたわけではないと思います。家族は全体性の問題ですから、自分が変われば周りも変わってきてくれますからね。旦那さんに対しても心を使えばもっと違った方向性を見出すことができたと思います。

作品というよりは教壇を降りて執筆している姿に批判的な方がいるということでしょうか。彼の作品は現場の教師を続けながらではきっと書けなかったといます。辛いこと苦しいことは、心穏やかな生活の中でなければ振り返ることができなかったのではないでしょうか。

心が動くようになってくると、世の中がまったく違って見えてくるものです。河合隼雄先生の考えがストンと降りてきて、やっと心が落ち着いてきた今、小学校の頃に心が震えたのを思い出し再読しました。灰谷さんの優しさが、教え子だけでなく、私達にまで届いてくれたことに感謝します。ただ、仕事も家庭も両立できる方法を小谷先生は見つけるべきだったかもしれません。

すべての子どもが宝物を持っている。

単純に凄いと感じた。そんな中、人間同士がお互いを認めるという行為も同様に進歩をしたのであろうか。そして涙を堪えられない文脈がある。それが普通であった。

新米女性教師の小谷先生が担任する1年生のクラス、男気ある足立先生、ゴミ処理場で臨時職員として働く人々の子どもたち。全ての子どもが「宝物」を持っている、その宝物を子供が見つける手助けをするのが親や教師、そして社会なのだろう。しかし、科学技術なる思想はおそらく大きな進歩を遂げていると認識されているのだろう。卒業アルバムにも同じように写真が載っている。

本書がフィクションなのか、ノンフィクションなのかは知らない。自分が通った小学校にも「特殊学級」という知的障害者(この障害者と言う言葉は昔から嫌いだ)の通うクラスがあった。こんな当たり前の事を中年オヤジは忘れかけていた事に気が付いた。現在と比較することが適切がどうかわからない。

教育って何?共同体って何?幸せって何? 30年前の作品に触れて考える。だが、人間の生き方の本質が書かれていることに間違いはないと思う。知恵遅れの子ども。やがてハエ博士と異名をとるようになる勉強の出来ない鉄三。