服部まゆみ

この闇と光

失脚した父王とともに、小さな別荘に幽閉されている盲目の姫君・レイア。優しい父と侍女のダフネ、そして父が語り聞かせてくれる美しい物語だけが、レイア の世界の全てだった。シルクのドレスや季節ごとの花々に囲まれた、満ち足りた毎日。

しかしレイアが成長するにつれて、完璧だったはずの世界が少しずつ歪ん でゆく―。

この闇と光 (角川文庫)
この闇と光 (角川文庫)服部 まゆみ

KADOKAWA/角川書店 2014-11-21
売り上げランキング : 43143

Amazonで詳しく見る
by G-Tools
一八八八 切り裂きジャック (角川文庫) 倒錯のロンド (講談社文庫) 開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU― (ハヤカワ文庫 JA ミ 6-4) 十字屋敷のピエロ (講談社文庫) 倒錯の死角 (講談社文庫) 新装版 マリオネットの罠 (文春文庫) ラバー・ソウル (講談社文庫) 倒立する塔の殺人 (PHP文芸文庫) 電氣人閒の虞 (光文社文庫) アルモニカ・ディアボリカ (ハヤカワ文庫JA)

参考レビュー

光と闇の意味

数の概念や哲学的な話が面白く感じたし、考えさせられもした。私は読み終えて、目次を見て、そして全体像を確認し、納得した。それらが前半と後半で交差している。前半はゆったりとした流れで進み、色鮮やかな表現で幻想的な物語調だ。

芸術家でもある作者の「美の世界観」を感じさせる構成だ。文学の素晴らしさを実感させる本だと思う。現実を突きつけられるスリルがあった。そしてもう一度前半部分を読み返し疑問部分を検証したりした。

視覚的な光と闇。感性の光と闇。。文章にしかできないこの面白さと意外性、そして美しさが表現されている。

冷水を浴びせられた気分だった。こういう仕掛けだったのか、と。後半になり世界が一転。前半と後半のギャップと、明かされる真相がこの物語の最大の魅力だろう。

全ては幻想のために

物語の全ての道具立てが、謎解きのために奉仕されている本格ミステリも美しいものですが、ミステリ的な構成さえも「幻想」に奉仕させてみせた本書の美しさもまた格別のものがあります。しかし、本書は紛れもない「幻想小説」です。

本書に狭い意味での「ミステリ」を期待した読者の中には、曖昧模糊としたエンディングに失望を覚える方もいるかもしれません。そのどんでん返しも、綿密に組み立てられた構成も、それが主題ではなく、全てが最後の「混沌」のために奉仕されている「部品」に過ぎないのです。

中盤に、文字通り世界観ががらりと反転するどんでん返しがあって、伏線も(本格ミステリ的なものではありませんが)綿密に張り巡らされていますから、ミステリとして読んでも間違いではないでしょう。

読者によって好き嫌いは分かれるかもしれませんが、ジャンルの枠にとらわれずに楽しんで……いや、酔い痴れてほしい逸品です。こんな世界を構築してみせた著者の力技には、敬意を表さずにいられません。