東野圭吾

白夜行

19年前の大阪の質屋殺し。迷宮入りしたこの事件に関係した少年と少女が歩んだ道は…。絶望の白い光の中、魂の荒野を行く男と女を、叙事詩的スケールで描く傑作ミステリー長篇。

白夜行 (集英社文庫)
白夜行 (集英社文庫)東野 圭吾

集英社 2002-05-25
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参考レビュー

追いかけてくる過去。雪穂と亮司の「白夜行」に震えました。

雪穂は、端から見れば、成功の階段をどんどん上がって行きます。この不気味さは?と読み進めると形容しがたい恐ろしさが、否応無しに襲ってくるのです。雪穂の手作りのポーチの刺繍も、後にオープンした店の名前も「R&Y」。東野作品の中でも、圧倒的な力で読者を引き込み、試し、疲れさせる・・・こんな作品は初めてで、魂が震える思いで必死に読み続けました。しかし、主人公たちの生活は、あまりにも荒んでいる。

しばらくは、心から離れないと思います。雪穂も亮司も非情で冷酷です。しかし、どこまで行っても「過去」がついてくる。貧しいながらも、人々の活気に溢れ、何となく煤けた町や駆け回って遊んだ頃を思い出しました。物語の舞台が、昭和40年代。

「愛情」などという言葉の欠片も感じられない。彼女と彼を、長い期間結びつけていたのは、亮司の贖罪か、歪んだ愛か、雪穂が亮司をただ利用しただけなのか・・・そこは、どうしても解かりません。でも、それだけでしょうか。作者が、肝心な部分は読者の想像に任せて、決して主人公の気持ちを言葉では表さないという手法は、正に圧巻でした。雪穂や亮司は、私とほぼ同い年です。

遊び道具はあまりなくても、周りの大人たちの温かさがあったように思います。何回読んでも解からないでしょう。とてつもなく重い小説を読んでしまいました。周りの大人たちも何処かがおかしい。間違いなく、私の中では最高傑作です。

闇の中にも光が

所謂「太陽」が煌々と照る世界ではありません。その表現方法が素晴らしいです。従って、それは全部が全部一致した見解と言う訳ではありません。そこで「白夜行」です。

物語は、そこを起点に二人の幼少時代に形成された「心の闇」が、えんえんと19年間に渡って書き継がれる訳です。彼らが「闇の世界」に生きていたからと言って、そこに全く「光」が無かったと言うことにはなりません。でもまっ暗闇でもありません。彼らの中に浸み込んでいる「闇の心」も、それが彼らのすべてではありません。

彼らが小学生の時代に起きた質屋の主人殺害事件をスタートに、次々に不可解な事件が起きてゆきます。唐沢(西本)雪穂と桐原亮司の二人の19年間の歩みの物語です。そこに「人間らしさ」が生み出す「優しさ」も、一面として持っているからこそ、この小説がよりリアルなものとして、私たちに語りかけてくるのでしょう。刑事や探偵を初め多くの他人の口を通して語られます。

彼らの罪の連鎖は、巡り合う人々を皆不幸にしたかと言えば、そうではないでしょう。この小説の凄さはそこにあると思います。そのことが、人間の持っている多面性を良く語っています。「ノワール」と言うだけでなく、そこには「人間」がいるからです。