平山瑞穂

忘れないと誓ったぼくがいた

たとえ世界中の誰もが君を忘れてしまっても、ぼくだけは君を憶えてる!君の存在を証明するのは、ぼくの手元に残されたたった数分の映像だけ。高校時代。優 等生だったぼくの心を一瞬にして奪い去った君。

大好きで、いつも一緒にいたくて仕方がなかった。なのに、いま、ぼくは君の顔さえも思い出せないんだ…。

いったい、なぜ?君はホントに存在したの?―時の裂け目に消えゆく少女と、避けられない運命を変えようと必死にもがく少年の恋を描いた、激しく切ない恋愛 小説。

忘れないと誓ったぼくがいた (新潮文庫)
忘れないと誓ったぼくがいた (新潮文庫)平山 瑞穂

新潮社 2008-07-29
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参考レビュー

決して記憶から消えないラブストーリー

主人公のタカシが心に決め歩み始めた道を意識したわけではないですが、今著ももし可能なら映画化とまでは言いませんので、映像化してもらえないでしょうか。単純な高校生の純愛になりそうなところ、日本ファンタジーノベル大賞受賞作家の手腕を発揮。

読んでのお楽しみとさせていただきますが、どちらかが消えてなくなる、しかも消えると同時に、世界に残った人々の記憶からも消えてしまう。そんな運命に必死に抵抗し記憶にとどめようとする登場人物のまっすぐな愛情の深さに胸がしめつけられて仕方がありませんでした。

絶対に良い作品になると思います。クライマックスでは、通勤途中電車内にて、零れ落ちそうになる涙を必死でこらえるほどでした。

「ラスマンチャス通信」は全く肌にあいませんでしたが、今著は、直球ストライクゾーンど真ん中に突き刺さりました。そして、観てくれた人すべての記憶から消えない作品になると思うから。

なぜ僕らは彼らを忘れてしまうのか

すべてが消えていく性質から、作者もファンだというポール・オースターの著作も確かに想起せずにはおきません。そんなことに理由は要らない。そこにこの作者が抱えている「文学=愛」の核心が秘められているような思いがしました。なぜ僕らは彼女の存在を忘れてしまうのか。もちろんベタな恋愛ものとして読んでも全然いいし、一級のエンターテイメント。

彼女が消えていくのはなぜか。この作品は、一見今流行の、喪失の恋愛小説に似た趣向を持っています。大切なのは、彼女を忘れないということ。彼は必死に彼女を救おうとするが、彼女の奇妙な現象を食い止める術が見つけられない。読みはじめて、いったい『ラス・マンチャス通信』の作家が、第2作目に、なんでこんなベタな恋愛小説を描いたのかと僕もやはり思ったわけですが、最後まで読み終えて、不覚にも泣いてしまっていた自分がそこにいた。

存在が消えてしまうという「奇病」を患った女の子に恋をした少年の話。この作者にはカフカやベケットの血が脈々と受け継がれているようです。彼女は自身が消えるだけではなく、彼女が消えたことそのものが周囲の人間から忘れられてしまう状況に見舞われている。ですが、この作品はそれらの小説とは少々味が違います。

文学性も同時に注ぎ込んだこの作品は、次作も期待せずにはおかない、現在の小説の可能性が刻印された、傑作だと思えます。これは「記憶」を巡る物語なわけです。まったく意味不明である。そして少年は「消えた彼女」を救おうと奔走しはじめる…。