誉田哲也

武士道シックスティーン

武蔵を心の師とする剣道エリートの香織は、中学最後の大会で、無名選手の早苗に負けてしまう。敗北の悔しさを片時も忘れられない香織と、勝利にこだわらず 「お気楽不動心」の早苗。相反する二人が、同じ高校に進学し、剣道部で再会を果たすが…。

青春を剣道にかける女子二人の傑作エンターテインメント。

武士道シックスティーン (文春文庫)
武士道シックスティーン (文春文庫)誉田 哲也

文藝春秋 2010-02-10
売り上げランキング : 28465

Amazonで詳しく見る
by G-Tools
武士道セブンティーン (文春文庫) 武士道エイティーン (文春文庫) 武士道ジェネレーション 疾風ガール (光文社文庫) ガール・ミーツ・ガール (光文社文庫) 幸せの条件 (中公文庫) 世界でいちばん長い写真 (光文社文庫) まっしょうめん! (偕成社ノベルフリーク) 一瞬の風になれ 第一部 -イチニツイテ- (講談社文庫) 風が強く吹いている (新潮文庫)

参考レビュー

ユニークな味わいを導入した爽やか系ポーツ小説

映画にもなったようだが、この辺の味わいは小説ならではのものだ。だから逆に敬遠する読者も少なくあるまい。交互の語りは、いわば弁証法。主題は、なんといっても二人の主人公のひとり、磯山香織に関わる。これがもう一人の主人公、西荻早苗。

性格的にものんびりおおらかで天然系の早苗と、古風な野武士のような粗野にして熱く激しい香織の対比が楽しい。ところがこれが無名の、普通の規範には入らない剣士に負けてしまう。これはとにかく勝つことを目的にした激しい剣道で、勝負意外には眼中にない。そこへ行くと、この小説はなかなかユニークだ。この頃、とくに爽やか系のスポーツ小説が盛んである。

二人のやや風変わりな競争と、ややいびつな友情の日々が始まる。しかしある種のマンネリが見られるのも確かである。つまるところは、スポーツ感動もの。まず高校女子剣道という設定。

最後は、ある種の精神的な向上へとつながっていって、その辺はスポーツ感動ものの王道を行くわけだが、そこに至るルートが面白い。気持ちよくどんどん読めた。こちらは中学に入って何となく剣道を始めたいわばまだ素人で、それまで日本舞踊をやっていたという異色の剣士。二人は互いにないものを獲得してゆくわけで、それを交互に語りを変えて描くというのが効果的なのも当然だろう。笑える。

誉田哲也は警察小説より青春小説かも?

セブンティーン、エイティーンと続きますが、恐らく本作を読めば全て読まずにいられなくなります。

内容も決してきれい事ばかりの青春小説とは違い、それぞれの個性をしっかり伸ばしながら成長していく過程を楽しめる作品です。警察小説ではちょっと違和感のある軽妙な言い回しも、この年代の少女達に当て嵌めると素晴らしいテンポとスピード感となり、剣道という表現しにくいスポーツを鮮やかに描ききってます。

書店店頭ではメジャーな警察小説で名前を売り、本当は青春小説を売りたかったのでは?と思いたくなるほど、名作だと思います。

代表作のストロベリーナイトに辟易した人もいるかもしてませんが、この作品は同じ著者が書いたとは思えないほど、カラっとした青春小説に仕上がっていて、一気読みしてしまいます。