池井戸潤

下町ロケット

取引先大企業「来月末までで取引終了にしてくれ」メインバンク「そもそも会社の存続が無理」ライバル大手企業「特許侵害で訴えたら、…どれだけ耐えられる?」帝国重工「子会社にしてしまえば技術も特許も自由に使える」―佃製作所、まさに崖っプチ。

下町ロケット (小学館文庫)
下町ロケット (小学館文庫)池井戸 潤

小学館 2013-12-26
売り上げランキング : 899

Amazonで詳しく見る
by G-Tools
下町ロケット2 ガウディ計画 ルーズヴェルト・ゲーム (講談社文庫) オレたちバブル入行組 (文春文庫) オレたち花のバブル組 (文春文庫) 空飛ぶタイヤ(上) (講談社文庫) 空飛ぶタイヤ(下) (講談社文庫) 鉄の骨 (講談社文庫) ロスジェネの逆襲 (文春文庫) 民王 (文春文庫) 七つの会議 (集英社文庫)

参考レビュー

知財争奪戦は踏み台に過ぎない。ものづくりに夢を託しプライドを賭け闘う町工場のドラマ

「ものをつくる」ってことには、それ自体感動がある。嵐が過ぎ去って、主人公は、これが俺の人生なのか?という問題に立ち返る。ロケットエンジニアリングをネタにした知財争奪戦というプロローグを軽々と踏み越えて、この物語は、真正面からロケット開発の現場へと挑戦する。物語の前半は、確かにその通りで、特許侵害を巡る法廷劇や、大企業による買収といったビジネスドラマであり、主人公は翻弄されながらも何とか生き残っていく。

数年前「レボリューション・イン・ザ・バレー」を読んだときにも、ものをつくるという行為に宿る昂揚と恍惚に打ち震えたが、「下町ロケット」の後半も、ものづくりに夢を託しつつ、それを夢物語でなく、現実のドラマとしてリアリティを持って書き抜いている。そこからが、この「下町ロケット」の本領だ。その期待は、良い意味で裏切られた。主人公とともに。

研究者として挫折し父の町工場を継いだ主人公、メインバンク、ライバル企業、巨大企業といったそれぞれの立場の人物の思惑とその錯綜がよく描かれているでも、それはプロローグに過ぎない。自己の幸福を他者の評価に委ねず、自らの胸の裡に何らかの矜恃を秘め、辛うじてそれを守りながら生きている人であれば、必ずこの物語に勇気づけられるだろう。自分がつくったものに惚れ惚れと眺め入ってしまうような感動。

Amazonの内容紹介や、腰巻きの惹句から想像される内容は、中小企業と、それを食い物にしようとする大手企業の闘い、だろう。ものづくりは、現代であっても夢となりうる。

ものすごく面白い。読むべし。

私にとって、久しぶりに読みごたえのある小説で、実際私は通勤途中で読んでいて2駅乗りすごしてしまいました。また、「ハゲタカ」の真山氏に続き、新たに追いかけたい著者が増えてうれしい限りです。

本書のタイトルを見たとき、実在する「植松電機」という会社のことが脳裏によぎり手にした本でしたが、植松氏の講演にも似たような高揚を感じる読了感で、大正解でした。この企業がもつエンジン部品の特許を巡って大手企業がおりなすさまざまな策略や圧力のなか、社長と社員が力を合わせて乗り切ってゆく姿が本当にリアルに描かれていて、時間がたつのを忘れさせてくれるほどぐいぐい引き込まます。

元ロケットエンジン研究者が失敗の責任を取って研究所をやめた後、佃製作所という親の町工場を継いだところから始まるビジネス小説です。町工場の佃製作所が大手企業から降りかかる様々な難局に立ち向かい、ギリギリのところで乗り切ってゆく姿はエンターテーメント性も抜群ですし、主人公がつねに突きつけられる難局の中で「会社とは?」「仕事とは?」「生きるとは?」を問いながら選択をした結果、反対者、傍観者、協力者との関係性や態度が徐々に変化てゆく様子は感動ものです。