池間了至

アディクトの優劣感

セックス、ドラッグ&サイケデリックトランスに象徴される若者の対抗文化と、彼らの心の中に潜む闇をリアルに描ききった著者渾身のデビュー作!

アディクトの優劣感アディクトの優劣感
池間 了至

ウルトラヘヴン (1) (ビームコミックス) 太陽と風のダンス[改訂版] Cotton100% 知覚の扉 (平凡社ライブラリー) アジアに落ちる

by G-Tools

参考レビュー

それでも奇跡の逆転劇に命を賭けて

あれだけの人間が心底衝撃を受けたこの体験を、形にするのにはこれだけの時間が必要であった事を驚くべきであろう。夜になると曜日を問わず、互いの家に集い、挨拶代わりにガンジャを吸って、今日仕入れたばかりのゴアトランスの12inchを聞きながら、強烈な楽観主義に彩られた意識の進化論について熱く語り、週末ごとに日本中のパーティーを目指して短いが過去に体験した事のないほどの深度の旅に出て、様々な人々と出会い、別れ、互いの意識、人生を共有し、共感し、与えあい、奪い合い、アガったり、落ちたりを繰り返し、この世界の生の果てまでも突き抜けようとする激しい衝動に自身の身を加速させながら、永遠をつかみ取ったり、他者の視線の中に人間関係の地獄を体験したり、自己愛と諦め、主観と客観、自己と他者のなかで知らず知らずのうちに健康な心をすり減らしながら、それでも奇跡の逆転劇に命を賭けて、それのみが人生の目的かのように、音楽と、ダンスと、ドラッグと、この世界の秘密に取り憑かれてパーティーに通った日々。その中で記されす、書き留められず、記憶の彼方に消え去ってしまったコトバ、気持ち、気付きがこの本の中に残されている。

1990年代中盤から続く日本におけるサイケデリックカルチャーがこれらの表現に到達するまで10年の年月が必要だったこと。この本は作者の体験をリアルにもとにしたものだけれど、これらの記憶はあの当時(そして今も)トランスが好きで、このシーンに関わっていた人間達の記憶でもある。

いま生きている事を最高な事だと思えるように生きてこられた事に感謝。

清野栄一やゴルゴ内藤に続くトランス文学がまた一つ。逆説的に如何にサイケデリックな体験を対象化する事が困難かという事が判るし、その内容が普遍的であることの証だと思う。

一晩でアディクトさせてくれる質のいい上ネタ。

次作を、次作をと、脳が欲する。そして昨夜、一気に読み終えた。音楽好き、妄想好き、依存好き、踊り好き、 そして深夜の読書(最高のChill Time!!)好きの俺は、帯の派手なキャッチコピーに若干のダウトを唱えながら、「アディクトの優劣感」を購入した。

一晩でアディクトさせてくれる質のいい上ネタ。面白い!共感を感じ、嫉妬を感じ、愛おしさを感じた。

一部の音に選ばれた夜好きPeopleの誰もが感じるであろう感情の機微、ムフフな描写、選択の局面、黙考About人生、音への傾倒、愛する事、関係を築く事、分かち合う事、そして訪れる躁鬱の波。絶妙なSpeed感のStory展開にグイグイと惹き込まれる俺。それらが著者のドンヨリ感の無い、抜けのよい爽やかな文体で綴られる。

リミッターカットへのあくなき欲求と社会生活への適応に既に折り合いをつけた貴方、折り合いをつけ切れず日々葛藤しながらも週末には音に溺れる貴方、貴方の為、俺の為、そして全てのPartyFreakの為に書かれた一冊。淡々と刻まれる活字のBeat、巧妙に構築されたStoryのMelodyに踊り続ける俺は、歓喜の叫びを止める事が出来ない。