稲見一良

ダック・コール

石に鳥の絵を描く不思議な男に河原で出会った青年は、微睡むうち鳥と男たちについての六つの夢を見る―。絶滅する鳥たち、少年のパチンコ名人と中年男の密 猟の冒険、脱獄囚を追っての山中のマンハント、人と鳥と亀との漂流譚、デコイと少年の友情などを。ブラッドベリの『刺青の男』にヒントをえた、ハードボイ ルドと幻想が交差する異色作品集。“まれに見る美しさを持った小説”と絶賛された第四回山本周五郎賞受賞作。

ダック・コール (ハヤカワ文庫JA)
ダック・コール (ハヤカワ文庫JA)稲見 一良

早川書房 1994-02-01
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参考レビュー

静かな時間を感じる

いい読書ができた。山本周五郎章は裏切らない、と読書好きの同僚が言ったことがあったが、本書を読めばその言葉が本当であったことを理解できる。帯のうたい文句は「誇り高き探偵たち We Loveハードボイルド」という企画シリーズです。でも本書には探偵が出てきません。

作者も知らず、タイトルも知らず、帯買いしました本書。めずらしい鳥を撮ってしまう男、絶滅したリョコウバトの話、狩りの上手な少年と生きる意味を見出したおじさん、脱獄囚を山中に追う日系二世とインディアンの末裔、鳥と亀に救われた少年、デコイと少年の話、この六篇の根底に流れているのは「生きる」ということである。

現実と幻想のちょうど境目を辿るような物語たちが、僕たちに示してくれるのは「生きる」意味。そしてその物語たちは静かな時を読者にプレゼントしてくれる。その完成度にびっくりしてしまいました。

プロローグに出てくる青年の「夢」の物語のような数編の物語。静かな文体であればあるほど、読者に文章が迫ってくる。その静けさは登場人物達が作り上げている。

今までであった中で最高の一冊

一生かけても、私には稲見さんのお書きになった言葉の一言に匹敵する言葉を書くことはできないでしょう。降りなければならない、この本を読むのを中断しなければならない、たったそれだけの事を、辛く、悲しく感じました。そして、その時にはすでに稲見一良さんはこの世から旅立ってしまった後でした。

この作品は、そんな言葉のカタマリです。私が稲見一良さんを知ったのはこの時でした。

最初のページを開いた瞬間から、他のことは全て頭の中から消え去りました。何時の間にか東京に着いていました。

帰りの新幹線の中で読みました。随分前のことになりますが、関西に仕事で出かけたとき宝塚に住んでいる友達に薦められた本です。