石田衣良

波のうえの魔術師

あの銀行を撃ち落とせ!謎の老投資家が選んだ復讐のパートナーはフリーターの“おれ”だった。マーケットのAtoZを叩きこまれた青年と老人のコンビが挑 むのは、預金量第三位の大都市銀行。知力の限りを尽くした「秋のディール」のゆくえは…。

新時代の経済クライムサスペンスにして、連続ドラマ化話題作。

波のうえの魔術師 (文春文庫)波のうえの魔術師 (文春文庫)
石田 衣良

1分間バフェット お金の本質を解き明かす88の原則 (1分間シリーズ) 株のジンクス 格言で学ぶ相場の哲学 5700人の社長と会ったカリスマファンドマネジャーが明かす 儲かる会社、つぶれる会社の法則 うつくしい子ども (文春文庫)

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参考レビュー

著者の筆力ならではの作品だと思います。

著者の主張がに語られていると思われる箇所が後半部分にあります。著者の変わらぬ若者に向けられた暖かな視線が感じられる作品でした。ただ、バブルという途方もないものの料理方法に迷ったのか、扱いが難しかったのか、最終的に無難な道を選んだのではないでしょうか。文体の魅力が味わえる作品だと思います。

謎の老人のキャラ設定も不足感があります。株式市場で大仕事をする人物にしては、背景が控えめすぎるように思われます。80年代バブルは、振り返ってみて、時代の変わり目であったようです。金融の技術は成熟国に欠かせない。

坂本龍馬、高杉晋作のような英雄も松下幸之助、本田宗一郎のような人たちも今の時代のモデルにはならない、時代が変わってしまった。この物語の背景にも、老人を狙って資産を騙し取っていた銀行の手口が使われています。株式市場を舞台にしたのは、さすがに良いところに目をつけたなと思わせられました。自分でリスクをとってマーケットに船出して欲しい。

銀行という最も信用を必要とする企業が詐欺師になってしまっていたわけで、その後遺症が依然として日本経済に残されたままになっているようです。この作品を読んで強く抱いた感想は、80年代バブルというものの大きさです。資産の運用を1%あげるだけで国家予算並みの収入が見込める。

永遠の課題が提出されていると思います

日本人はカネを汚いもの、と考える傾向がある。ここから先は決して小説の批判などではなく、小塚老人のマーケット哲学に対する一般人からの質問状ーと、して書きます。カネでカネを生むのは汗をかかない最低の仕事だと見ましている。ただ悲しいかな、国家は一人の人間ではなく、無数の若者をも抱えた複合体です。

私は株式投資などやったことがないので、ここに書かれている内容にどれだけリアリティがあるのかは分かりませんが、とても面白い小説でした。 登場人物を少数に絞って、タイトでスピーディなストーリー展開が良く、少々難しい証券取引の記述などもあまり気にならずに一気に読めてしまいました。確かに、国家を一つの人間として考えた時、盛りを過ぎた者は、これまでに蓄積した資産を運用して豊かな老後を送る権利を持っていると思います。だが目に見えない相手に対してはいくらでも残酷になれるー”という小塚老人のコメントには驚かされました。

私も長い間アメリカで暮らしていますが、その傾向はやはり否めないと思います。 揚げ足取りでなく、この作品が出てから8年後の金融資本主義崩壊を見るに付け、この作品には、常に問われるべき永遠の課題が提出されていると私は思うのですがどうでしょう? 。汗をかかないで、金融利潤だけで生きていく若者がもつべき“モラル”がはっきりと提示されない限り、日本人は(別に日本人だけではないでしょう)そういう生き方を永遠に拒否し続けると思います。

そろそろ次の段階に進む必要がなるのではないか。という老人の見解は別に間違っているとは思いません。 さらに、アングロ・サクソン人に関する”目の前の弱者に対しては当然のように手を差し伸べる。