いしいしんじ

麦ふみクーツェ

音楽にとりつかれた祖父と、素数にとりつかれた父、とびぬけて大きなからだをもつぼくとの慎ましい三人暮らし。ある真夏の夜、ひとりぼっちで目覚めたぼく は、とん、たたん、とん、という不思議な音を聞く。麦ふみクーツェの、足音だった。

―音楽家をめざす少年の身にふりかかる人生のでたらめな悲喜劇。悲しみ のなか鳴り響く、圧倒的祝福の音楽。坪田譲治文学賞受賞の傑作長篇。

麦ふみクーツェ (新潮文庫)麦ふみクーツェ (新潮文庫)
いしい しんじ

ぶらんこ乗り (新潮文庫) トリツカレ男 (新潮文庫) 宇宙戦争 (創元SF文庫) 舞台「麦ふみクーツェ」オリジナルサウンドトラック集 白の鳥と黒の鳥 (角川文庫)

by G-Tools

参考レビュー

クーツェは見える?

クーツェというのは、ある日突然、少年が目にし、音を耳にした、麦ふみをする小さな子供です。このお話を読むと、久しぶりに合奏したいなとか、ちいさなで歌いたいなと心から思っている自分に気付くことになります。

少年は、身体が大きいために、同世代の子供たちから見えない存在のように扱われています。

主人公は、身体のおーきな少年です。でも、彼には放課後を過ごす、おじいさんの吹奏楽団とそして、鍛えられた打楽器の才能がありました。

おじいさんは、毎日、吹奏楽のことしか考えていません。クーツェの言葉は、じんとくるものも、よくわからないものもありますが、すべては終りに近付くにつれて、明らかになっていき、そして、素敵な結末が待っています。

父親とおじいさんと3人暮らしで、お父さんは、毎日数学のことしか考えていません。ぜひ、手にとって、表紙を1枚めくってみてください。

生きるということに向き合った名作。

麦ふみクーツェは“生きる”ということに正面からぶつかっていった小説である。

打楽器、それも声というひとのからだの奥底から絞り出される音楽によって、ねこは再び生きる力を取り戻す。

圧巻は瀕死のねこが横たわる手術室に向かって仲間の“へんてこなひとたち”が音楽を奏でる終盤の場面だ。

“生きる”ことについて真摯に考え抜いたこの小説の根底に音楽が巧みに織り込まれていたことをあらためて実感する、名場面だと思います。