石持浅海

Rのつく月には気をつけよう

湯浅夏美と長江高明、熊井渚の三人は、大学時代からの飲み仲間。毎回うまい酒においしい肴は当たり前。そこに誰かが連れてくるゲストは、定番の飲み会にア クセントをつける格好のネタ元だ。

今晩もほら、気持ちよく酔いもまわり口が軽くなった頃、盛り上がるのはなんといっても恋愛話で…。ミステリーファン注目 の著者が贈る傑作グルメ・ミステリー。

Rのつく月には気をつけよう (祥伝社文庫)Rのつく月には気をつけよう (祥伝社文庫)
石持 浅海

温かな手 (創元推理文庫) メイン・ディッシュ (集英社文庫) わたしたちが少女と呼ばれていた頃 (碓氷優佳シリーズ) 心臓と左手―座間味くんの推理 (光文社文庫) 月の扉 (光文社文庫)

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参考レビュー

類まれなれなる傑作

まあこの手の作品ではありがちな仕掛けなんですが、ぜんぜん想像もしませんでしたね。興味があるならすぐ買って読みましょう。ぱっと見、ごく普通の日常の謎系ミステリにみえる。それは、手間をあんまりかけていない一品物が一作品に一つしかでてこない、ということ。これがまた、きれいに騙されました感があって、すごくいいんですよ。

類まれなれなる傑作。もちろん、グルメミステリなので毎回うまそうな食べ物が出てくるわけだが、北森の某シリーズとか、スタウトの名作とかとは、明らかに一線を画しているのだ。というわけで読者は惜しみつつ本を閉じる。結論を先に書いてしまおう。これまで読んだ限りの石持作品は、なんらかの特殊な前提の状況をうまくひねった作品に妙があると思っていたが、これは全然前提をひねってない。

表題作に当然のように出てくる生牡蠣とか(しかもスーパで買ったパック品に、塩とかポン酢とか付けるだけ)、ギンナンを炒っただけとか、果てはチキンラーメンを砕いただけとか、もしデヴィッドソンあたりが読んだら肝をつぶすだろう。いや、これは幸せですね。でもでも、読んでいてこれが実にうまそうなわけです。でも、思い返してみればまったくフェアで、騙されてそれでいて爽やか。この辺はもう筆の力か、はたまた酒の力か(笑)。

『月の扉』の石持によるグルメミステリの短編連作集。・・・と、読者が幸せに包まれつつ最終話に突入すると、とんでもない仕掛けが待ち構えている。しかし各短篇ごとに凝った構成がたいそう面白い。某歌野作品とは格段の差です。

石持作品には珍しい軽妙・洒脱な連作短編集

’05年から’07年にかけて『小説NON』に掲載された7編からなる、おいしい酒と肴、そして恋にまつわるミステリー連作短編集である。真相への伏線の連続に読者が一瞬たりも気が抜けないのは他の石持作品と同じだが、本書はちょっと趣が違って、謎解き役の長江の最後の話まであくまで会話の中で無駄なく進む。『月の扉』や『扉は閉ざされたまま』などで有名な、本格ミステリーの俊英、石持浅海がこんな軽妙で洒脱な作品を書くとはオドロキだ。

いつもの仲間が長江のワンルームマンションにワイワイ集えば、気の置けない美食パーティーの始まりだ。また、毎回誰かが連れてくるゲストは、飲み会のアクセントになって、酔いもまわり口が軽くなったところで謎が披露され、さらに恋愛話も盛り上がっていくのである。

装丁画も綺麗でなかなかオシャレである。良い結果ばかりではないが、それでもなんかこうココロがじんわりとする。

生ガキにはスコットランド・アイラ島のシングルモルトウイスキー、チーズフォンデュにはオレゴンの白ワイン、豚の角煮には沖縄の泡盛と、各ストーリーに登場するとびきりの旬の料理と酒の組み合わせはまさに垂涎モノ。メインの登場人物は、大学時代からの飲み仲間である湯浅夏美、長江高明、熊井渚の3人。