岩井俊二

リリイ・シュシュのすべて

雄一は、中学一年の夏休み後、仲のよかった同級生から突然イジメの標的にされる。彼は、心の痛みをカリスマ的な存在である歌姫“リリイ・シュシュ”の世界 で癒そうとする。そこだけが自分の居場所であるかのように・・・・・。

イジメ、万引き、援助交際・・・・・・閉塞感に押しつぶされそうな日常とそこから 逃避してリリイ・シュシュのファンサイトに没頭する非日常の間で生きる十四歳。

青春のダークサイドをリアルに描き出し、話題を呼んだ‘01年公開作品のも とになった、ネット連載小説の文庫化。

リリイ・シュシュのすべて (角川文庫)リリイ・シュシュのすべて (角川文庫)
岩井 俊二

ラヴレター 角川文庫 スワロウテイル (角川文庫) トラッシュバスケット・シアター (角川文庫) プルトニウムと半月 角川ホラー文庫 花とアリス<花とアリス> (角川書店単行本)

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参考レビュー

14歳の苦み、痛み

読み始め、前半はネット掲示板での稚拙な諍いシーンが続くが、ミステリアスな要素が中心であり、徐々に引き込まれる。よくも悪くも、である。いじめ、レイプ、援助交際、そして殺人。左開きの横書きであり、最初は戸惑ったがすぐに馴染んだ。

バーチャルの中、14歳の少年によって淡々と語られるリアルは、重々しく、生々しい。

インターネットが浸透した今、年代を問わず読んで欲しい一作。しかし彼らと同じ年代の頃に味わった苦みと痛みを充分に思い出さざるを得なかった。いちアーティストかつ教祖的なカリスマでもある彼女が直接姿を見せることは一度も無い。

本作は岩井俊二氏によるネット連載小説であり、同タイトル映画の原作である。

できれば映画の方も見てみたい。中学生によるリアルな闇の部分に焦点を当てて描く。そして中盤以降ガラリと変わり、一人の少年による独白という形での書き込みとなってからこの作品は姿を変える。

本作を通してネット掲示板の書き込みというスタイルを貫いている。

とっくに10代ではない私が今、彼らと完全に共鳴するのは難しい。本作を通じて、常に中心にいるのが「リリイ」という神格である。その存在は常に第三者から客観的に語られており、本作では彼女の歌詞からでしか彼女の持つ世界観を垣間みることができない。とにかく本作の登場人物たちは、リリイと、彼女の歌を中心に回っている。

不思議な感覚

「生きていること」をかみしめた。だが、それだけではない。あっという間に読み進み、気が付くとページが終わっていた。

不思議な感覚だが、もやもやとした気持ちの中に一種の爽快さを感じる。そういったものを散々見せつけられ、自分をも含めた人間に対し嫌悪感を抱かずにはいられない。

何なんだこれは?読み終えた後、思わずつぶやいていた。

イジメ、万引き、援助交際……人間の持つ様々な弱さ、醜さがこの小説には描かれている。人間は誰もがリリイ・シュシュのような「神」的存在を見出しながら生きているのではないだろうか。