加賀美雅之

双月城の惨劇

ライン川流域の古城「双月城」で起こった奇怪な殺人事件。美しい双子の城主の一人が、首を刎ねられ両手首を切断されて見つかったのだ!しかも現場は、完全 なる密室だった。さらに滞在者を襲う新たな惨劇が―。

パリ警察が誇る名予審判事ベルトランが、ベルリン警察の雄と熾烈な推理対決を繰り広げる!本格推理史 にその名を刻む美しき傑作が、ついに文庫化。

双月城の惨劇 (光文社文庫)双月城の惨劇 (光文社文庫)
加賀美 雅之

監獄島〈下〉 (光文社文庫) 監獄島〈上〉 (光文社文庫) 縛り首の塔の館 シャルル・ベルトランの事件簿 (講談社ノベルス) 世界短編傑作集 2 (創元推理文庫 100-2) 犯罪ホロスコープ〈1〉六人の女王の問題 (光文社文庫)

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参考レビュー

“本格”への回帰

文体もこれが事実上のデビュー作とは思えないほど堂々としたもので、適宜挿入される図解が謎解きの雰囲気を一層高めています。犯人が途中でわかってしまいましたが、かといってそれは謎解き全体の半分未満で、それによって興が削がれることはありませんでした。

特に第1の殺人のトリックの懲り様は凄い!複雑なのにわかりやすく、そのトリックが完成する瞬間が見えるようでした。

時は1931年、場所はドイツの古城、不可能な密室殺人、解決するのはパリの名判事、読者への隠し事は一切なく、舞台設定を最大限に利用した凝ったトリック。もちろん、それは懐古趣味ということではありません。

ミステリーを愛する全ての方にお勧めできる本です。

世には実に様々なミステリーが溢れているわけですが、これはその原点に帰ることを意図したような名作です。

ミステリー・ファンと呼ばれる人たちは、元々こういう世界に惹かれてミステリーを読むようになったのではないでしょうか。こういうのを“本格推理小説”と呼ぶべきでしょう。

トリックにもう一捻り、二捻りあると尚嬉しい。

首無し死体に密室状況、素晴らしい。途中の、事件が起きた段階で、色々と不可解な状況はあるが、それでもある程度先の展開が読めてしまう。

しかし、だからこそその作品に対しての見る目は、他の作品以上に厳しくならざるを得ない。不気味な伝説の残る城、大いに結構。作者は、カーが好きらしい。

どれもこれも、大好きな要素ばかりだ。個人的な評価を下すなら、面白いと思う。それは、探偵役を務める人物の名前にも表れているし、物語の舞台となる時代が1930年頃というのも、ミステリの黄金時代に対する思い入れの一つかもしれない。執事やメイド、前々問題無し。

少し単純でまた、頭の働きの鈍いワトソン役も必須だ。あるいは、作中に密室講義をしたという「ドクター・フェル」なる人物についての言及があったり、この作品の至る所にちりばめられたこういった装飾は、個人的にはど真ん中ストライクだ。

しかし、それらの一連の作品を読んでからならば、少なくともそこはクリアしてしかるべきだろう。だが、しかし、解決部分(もしくは、真相)が良くない。もちろん、起きた事件すべての真相を完璧にわかったわけではない。

やや欲張りな注文ではあるが、もう少し、こちらの予想を超える水準のトリック、真相が欲しい。しかし、部分部分、事件の要素を細かくしてみていくと、少なくない所でこちらの予想したものとそう違わない展開だった。

ある意味、非常に素直、シンプルであるといえる。もっともっと面白くなければならないと思うし、また、そうあって欲しい。