海堂尊

ナニワ・モンスター

関西最大の都市・浪速で新型インフルエンザ「キャメル」が 発生した。経済封鎖による壊滅的打撃、やがて仄見える巨大な 陰謀。ナニワの風雲児・村雨府知事は、危機を打開できるのか? 村雨が目論む、この国を破滅から救うための秘策とは――。 

近未来を透視するメディカル・サスペンス!

ナニワ・モンスター (新潮文庫)ナニワ・モンスター (新潮文庫)
海堂 尊

輝天炎上 (角川文庫) カレイドスコープの箱庭 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ) 極北ラプソディ (朝日文庫) モルフェウスの領域 (角川文庫) 玉村警部補の災難 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

by G-Tools

参考レビュー

医学的な盛り上がりには欠けるもののうまく時事を取り入れた秀作

新型インフルエンザ、地方独立、医療問題と色々な題材を取り入れた秀作。作者の海道さんは、チームバチスタでクリーンヒットを出し最近ではジーンワルツなど、医療関係の作品が多い人です。

最後にそれらの謎解きが、地方の問題を紐解くことにより縺れた糸がほぐれ、関連性がわかるような構成になっています。まず、そのインフルエンザに関わる話が進行していきます。

もともとが、雑誌の連載の単行本化であるためか、すこし切れ切れ感があります。また、最終の謎解きの部分が、極北クレーマーのように行政に対する、幼稚とも感じる結論なので残念感は覚悟しながら読むことになります。

チームバチスタや、ジーンワルツのような路線とは異なりますがこれはこれで良い作品ではないかと思います。

主人公が3人いるような構成なので、主人公ベースで読もうとする私にはつらい構成です。が、この作者が持つキャラクターの面白さ、スピード感は健在です。

とはいえ、この作者にはめずらしく、終わり方が明るく、次につながる話になっているのと、400ページ近くの大作なのにあっさり読み切れる読みやすさはすばらしいと思います。

そして、何故か優秀な検察官が浪速に行くことになり、浪速の知事に諭され、何故か厚生労働省にガサ入れすることになります。この作品のあら筋は、まず、新型インフルエンザが浪速のとある小さい診療所で発生することから始まっています。

医療ガバナンス

プロットやキャラづくりはもちろん巧みでおなじみのメンバーが飛び跳ねる。これまで地域医療や、産科の深刻な現状、生命医療などの医療問題を世にミステリーとして提起してきた著者。

ぜひ、東日本大震災における海外医療チームの受け入れ拒否の問題や、原発作業員への造血幹細胞の事前採取問題など、震災において浮き彫りになった医療問題にも切り込んでほしいと願っています。もちろんAiが重要なキーワードとして登場。

医療を通じ、この国の従来の政治・行政の在り方と限界という新しいステージへの問題提起に挑んだ意欲作といえるでしょう。