加納朋子

ささらさや

事故で夫を失ったサヤは赤ん坊のユウ坊と佐佐良の街へ移住する。そこでは不思議な事件が次々に起こる。けれど、その度に亡き夫が他人の姿を借りて助けに来 るのだ。そんなサヤに、義姉がユウ坊を養子にしたいと圧力をかけてくる。

そしてユウ坊が誘拐された!ゴーストの夫とサヤが永遠の別れを迎えるまでの愛しく 切ない日々。連作ミステリ小説。

ささらさや (幻冬舎文庫)ささらさや (幻冬舎文庫)
加納 朋子

てるてるあした (幻冬舎文庫) ななつのこ (創元推理文庫) モノレールねこ (文春文庫) はるひのの、はる 掌の中の小鳥 (創元推理文庫)

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参考レビュー

別れてしまうのならば、少しでも長く。守り人との切ない時間

悲しみも悔しさも憎しみも淡々と感情的でなく描かれることでより感情はにじみ、愛情がじんじんと、波打ってくる 。物語は、幸せな日常を送る若い女性さやの夫が、あくまでも日常の中でふいに死に追いやられる出来事から始まります。そしてさやの守り人である夫が、生の世界、未完の人生を失っていく物語でもあります。

別れてしまうのならば、少しでも長く。さやの夫は実はまだ完全に死んだ(という言い方が適切かどうかは微妙ですが)わけではなく、生と死の世界の狭間にある空間で幽霊として、大好きな夫を失い悲しみに沈み、そして陰謀に対しあまりに無防備なところのあるさやとユウボウのの守り人として間接的に支え続けることになります。さやの無防備さにはらはらしどおしだったけれど、後半、さやの芯である合理性を優先しないある意味かたくなな(大切な夫が死んでしまったので変わらないように閉じているのでしょう)ゆずらなさが、そしてさやの怒りが激しくあらわになる場面があり、そこがとても好きです。

突然の出来事に、さやと、さやのあかちゃんであるユウボウは放り出され、身近だった人たちからの迫害から逃げるために、数少ないさやの親族が残した「ささら」という土地にある古い家に住むことになります。また、あいたいと願うだけ。また、夫を失い、はらはらと涙を流すさやも、好きです。

さやの無防備さはけれども利点でもあって、ささらの土地の人間くさい、時に陰謀に加担しそうなところさえある近所のおばあさん達や周囲の人々のハートをがっちりキャッチして、コミュニティを形成してその中で小さなユウボウを育てていくことができるようになります。「ささらさや」は誰よりも大切で愛する人を喪失していく過程の物語です。

こころ優しいミステリー

口うるさいけど心が温かいおばあちゃんトリオが良い味を出してます。この本を読んで、いっぺんに加納さんのファンになってしまいました!

まだまだ幼い感じの主人公と赤ん坊の息子とを取り巻く人々の人間模様をハラハラしながら眺める故人の夫。各章ごとにチョッとした謎解きが盛り込まれていて楽しめますよ。

最初は悲しみに打ちひしがれていた主人公が周りの人々に助けられながら少しずつ前向きに生きていこうと立ち直っていく様が優しい目線で描かれています。

題名の語呂の良さに惹かれて購入しました。