北森鴻

狐罠

店舗を持たず、自分の鑑定眼だけを頼りに骨董を商う「旗師」宇佐見陶子。彼女が同業の橘董堂から仕入れた唐様切子紺碧碗は、贋作だった。

プロを騙す「目利 き殺し」に陶子も意趣返しの罠を仕掛けようとするが、橘董堂の外商・田倉俊子が殺されて、殺人事件に巻き込まれてしまう。古美術ミステリーの傑作長編。

狐罠 (講談社文庫)狐罠 (講談社文庫)
北森 鴻

狐闇 (講談社文庫) 瑠璃の契り―旗師・冬狐堂 (文春文庫) 緋友禅 (文春文庫―旗師・冬狐堂 (き21-4)) 写楽・考―蓮丈那智フィールドファイル〈3〉 (新潮文庫) 凶笑面―蓮丈那智フィールドファイル〈1〉 (新潮文庫)

by G-Tools

参考レビュー

作者の最高傑作

ただ強いだけでなく、女としての弱さもあり、にもかかわらずその弱さをねじ伏せる気の強さのある陶子の奮闘は、素晴らしいし、読んでいて勇気が出てきます。それにキャラクター小説としても魅力的です。

非常に長い話ですが、その長さ、まったくのたるみがありません。

おそらくとても育ちが良いにもかかわらず、犯罪すれすれのかけひきがなされる怪しい世界で、一匹狼として生きている。

ジャンル的にはミステリーのコンゲームに含まれるのでしょうが、サスペンスとしても手に汗握る迫力であるし、職業小説としてもよく調べられた大変面白いものになっています。

本作以降、彼女でシリーズが書かれただけでなく、他のシリーズにも何度も顔を出す、作者にとって最も重要なキャラクター、まさに北森鴻にとってのディーヴァと言える女性です。いや、守られることを良しとしない、誇り高い女性です。

女性にこそ読んでもらいたい。

主人公の宇佐美陶子は、教養も美貌も若さもありながら、離婚経験者でかなり寂しい生活を送っており、頼りになる友人はいるけれど、まるっきり誰かに守ってもらうことはできません。

北森鴻で一冊だけ読むのなら、本作がおすすめ。推理作家協会賞を受賞した『花の下にて春死なむ』が男性向きなら、本作は女性向き。

北森氏の罠にはまって大変

TVの鑑定モノ番組では絶対わからない、奥深い闇から闇の世界に、ちょっとひんやりとしたものを感じる。骨董品には、作者、所有者、収集家、売買人の様々な思いが込められており、作品の上に積み重なって、美術品に別の美を加えるのかもしれない。

ストーリーもおもしろいし、骨董業界の語りもぐいぐいと好奇心を引っ張り込むし、一気読みせざるをえない魅力があふれている。美の収集といったきれいごとでは語れない、人間の欲が激しく絡み合う骨董業界の実態は、恐ろしい程である。

北森さんの作品は2作目だが、はまった。