小松左京

復活の日

MM‐八八菌―実験では、摂氏五度で異常な増殖をみせ、感染後五時間で九十八%のハツカネズミが死滅!生物化学兵器として開発されたこの菌を搭載した小型 機が冬のアルプス山中に墜落する。

やがて春を迎え、爆発的な勢いで世界各地を襲い始めた菌の前に、人類はなすすべもなく滅亡する…南極に一万人たらずの 人々を残して。人類滅亡の恐怖と、再生への模索という壮大なテーマを描き切る感動のドラマ。

復活の日 (ハルキ文庫)復活の日 (ハルキ文庫)
小松 左京

果しなき流れの果に (ハルキ文庫) 日本沈没 下 (小学館文庫 こ 11-2) 日本沈没 上 (小学館文庫 こ 11-1) ゴルディアスの結び目 (ハルキ文庫) 日本沈没 第二部〈下〉 (小学館文庫)

by G-Tools

参考レビュー

正統派《サイエンス・フィクション》の、傑作です。

歴史的に見ても、アーノルド・トインビー博士の《挑戦と応答の相互作用の法則》にある通り、破滅的な危機を乗り越えた国家は、その危機に匹敵する繁栄を手に入れるものです。

また、第2部「復活の日」では、絶滅の危機にまで追い込まれた人類が、ある《事件》を切っ掛けにして、《復活の日》に至るまでの糸口をつかむ場面が描かれ、これもまた、大変感動的です。特に圧巻なのが、第1部「災厄の年」です。

ここにもまた、20世紀・日本SFの凄さが隠されています。単なる娯楽作品としても、最高に面白いですが、それ以上の《何か》を訴えてかけてくる、大変、素晴らしい作品です。

小松左京氏の、この傑作SFにも《ピンチこそがチャンスである》という作者からのメッセージが織り込まれているように思います。日本SF界の巨匠《小松左京》氏による、世界破滅テーマSFの傑作です。

最初は軽いインフルエンザの流行から始まった《MM―88》ウィルスの繁殖が、やがて人類全体を破滅の危機にまで追い込んで行く過程が、社会科学的な視点から、実に緻密に、実にリアルに描かれています。

宇宙空間から採取された未知のウィルス《MM―88》が、軍事兵器として開発されることによって世界が破滅の危機に見舞われる、という内容の物語です。

テロの時代に再び省みられるべき傑作

テロリズムの最大の卑劣さはそれが民間人を標的としている点にある。

しかし、それら民衆の意向を汲み現代社会の頂点に立つべき者達が人類の未来に対して、本作の極右大統領や左翼科学者たちのような愚劣で狭窄な視野しか持たない人物であったらどうだろう。

だが、彼らが自ら武器を取って戦地に赴き敵軍と戦うことがあるか?あるわけがない。

元来戦争の準備状態に過ぎないとも言われる「国家」というシステムが様々なところで軋みながら悲鳴を上げ、大量殺戮を愉しむ悪鬼どもが世界に蔓延する現代。

実際に戦うのは常に軍に所属する一般兵達であり犠牲になるのは常に無辜の市民である。その成立から40年を経た今もなお、小松左京の歴史的傑作は時代の頂点で輝き続けている。

テロに対抗するためには国家的な軍事力が不可欠だが、兵器を開発し、軍を統治し、政治を動かすのは民主的或いは非民主的方法によって選ばれた少数の政治家である。

装備と訓錬を経た少数の兵隊達に対しての攻撃ならばいくらでも防御策はあるが、無防備な一般市民がターゲットとあれば、そうはいかない。

たちまちテロリストの卑劣漢どもは民主主義社会を侵略し崩壊させてしまうだろう。もちろん、現代民主主義の原理を根本から否定するような放言を吐きたいわけではない。