近藤史恵

サクリファイス

勝つことを義務づけられた〈エース〉と、それをサポートする〈アシスト〉が、冷酷に分担された世界、自転車ロードレース。初めて抜擢された海外遠征で、僕 は思いも寄らない悲劇に遭遇する。それは、単なる事故のはずだった――。

二転三転する〈真相〉、リフレインの度に重きを増すテーマ、押し寄せる感動! 青春ミステリの逸品。

サクリファイス (新潮文庫)サクリファイス (新潮文庫)
近藤 史恵

エデン (新潮文庫) サヴァイヴ (新潮文庫) キアズマ サクリファイス 3 (ヤングチャンピオンコミックス) サクリファイス 1 (ヤングチャンピオンコミックス)

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参考レビュー

面白い!

取り上げられているスポーツは、あまりメジャーではないロードレース。ただ、表紙が地味なので、誰かの紹介が無ければ素通りしてしまう人も多いでしょう。

読んで気が滅入るタイプの小説ではなく、むしろ読後感は良いので、たくさんの人に薦めることができます。万人受けする小説だと思います。

あまり知られていないスポーツだからこそ、そのルールのひとつひつや、レースの運び方に新鮮な驚きがあり、物語にとって実にいいエッセンスになっています。スポーツと絡めたミステリーというのが、また新感覚でとてもいいです。

じわじわ口コミで広がるタイプの小説だと思います。知れば知るほど、その特殊な「犠牲」のもとに成立する勝利のありかたに、心理的なかけひきに、奥深さを感じます。

色々と言われているようですが

スポーツとしてのリアルなこだわりを求めるならば、選手のブログを見ればいいのだ。大げさかも知れないが、私はこの物語を読んで、一人では決して生きる事ができない私たち人間が様々な状況において、主役になる意味と脇役になる意味をどう捉えて生きていくのかという問いかけをされているように思えた。私にとってはそれで十分だ。

だから色々と言われているように、この小説に描かれているデティールが正確さを欠いていたり、実際とは異なる状況があるとしても判断はできない。

だが、現実と天と地がひっくり返るほどの乖離があるとは思えないし、なによりも、著者が描いてくれた事によって自転車ロードレースの世界の精神性の高さを知り、深く心を打たれた。

私はこの競技について知識もないし経験もない。ストーリーとしては、突き抜けるような斬新さや衝撃というのではないのだが、ミステリーの要素が読者を引っ張ってくれるので緊張感と期待感を持って入り込める。あるいは解説本を読めばいい。

読み終えて久々に清々しい思いと、また胸を締め付けられるような切なさを感じた作品だった。そして、自転車ロードレースという競技が、まさにその問いかけをこれほどリアルに体現しているものだとは驚きだった。

しかしどちらかといえばミステリー小説ではなく、青春の物語だと思う。