車谷長吉

金輪際

地の下には三つの輪があって、この世を支えているという。その無限の底を金輪際という。世を厭い人を呪う生を送ってきた私の人生に、棘のように突き刺さ り、今なお己れを狂わせる記憶の数々…。

人間の生の無限の底にうごめく情念を描ききって慄然とさせる七篇を収録した傑作短篇集。

金輪際 (文春文庫)金輪際 (文春文庫)
車谷 長吉

塩壷の匙 (新潮文庫) 赤目四十八瀧心中未遂 車谷長吉の人生相談 人生の救い (朝日文庫) 妖談 (文春文庫) 反時代的毒虫 (平凡社新書)

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参考レビュー

目すべき純粋日本文学家車谷長吉さんの短編集について

死に通じる道をいつも意識されている方には「暗い私小説」というステレオタイプな感想ではなく、豊かな奥行き深い世界を見せてくれる作品群です。しかし、自分は今はまっとうな社会人。わたしもその1人です。

待ちきれず、電車の吊革にぶら下がりながら読んでみますと予想はやはり違わず、おいしい上質の小さなお菓子をむさぼるように少しずつ読みました。

島尾敏夫、福永武彦なんかも系統だと思います(車谷さん万一これを読んでも怒らないで下さいね)。直感は的中。

10月末のある朝、出掛けの時間にふとワイドショーを見ると、「赤目四十八瀧心中未遂」という文学作品が映画化される、とやっていました。その朝は自分で自分を諭し、出勤いたしました。

マンガ家のつげ義春氏をご存知の方は、氏の作品が提供してくれる「気持ち悪い+気持ちいい」みたいな感覚にあい通じる所を見出されるかもしれません。

楽しみのないわたしはさっそく次の日、残業で遅くなったにも関わらず(+ウチで2人の子供が待っているにも関わらず+お金ないにも関わらず)駅構内の本屋で車谷長吉さんの著作をさがしてみますと文春文庫に「金輪際」を見つけました。

しかし、その何日か後、古本バザーで「赤目四十八瀧~」を見つけ、これは何かの因果に違いない、と思い購入致しました。

久しぶりに危うい美的感覚に彩られた正しい日本文学を味わいました。制作が鈴木清順監督の「ツィゴイネルワイゼン」の方、大楠道代さんが出演されると聞き、そのとたん、20年ぶりに血が騒ぎました。

これを読んで救われるヒトというのはいる気がします。

身を削り、命を縮める文章

読むほうも金縛りに会い、真剣勝負に巻き込まれるのだから書くほうは本当に大変だろうと思う。作者に本当に感謝である。「変」はめずらしく軽いエッセイ風だがそうは簡単にはならない、馬鹿正直な作者に共感至極。

車谷長吉の小説を読むのは疲れる。この最後の文だけでも立ち読みしてみたら、もう離れられなくなると思いますよ。

「白黒忌」は久坂葉子という作家を読み始めるきっかけになりました。印象に最も残った短編は「金輪際」でした。

「児玉まで」はどこか「赤目」の習作っぽい作品で楽しい。真剣勝負は疲れるが得るものも確実に多い。