宮本輝

彗星物語

城田家にハンガリーからの留学生がやってきた。総勢十三人と犬一匹。ただでさえ騒動続きの大家族に、あらたな波瀾が巻きおこる。異文化へのとまどい、肉親 ゆえの愛憎。

泣き、笑い、時に激しく衝突しながら、家族一人ひとりは、それぞれの生の新しい手がかりを得る。そして別れ―。人と人の絆とはなにかを問う長 篇小説。

彗星物語 (文春文庫)彗星物語 (文春文庫)
宮本 輝

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参考レビュー

13人と1匹のちょっとリアルなホームドラマ

ハンガリーから留学生のボラージュが城田家にやってくる。突如、彗星の如く。おじいちゃんが読んでも、お父さんが読んでも、若者が読んでも、外国の方が読んでも、もう犬が読んだって、それぞれの楽しみ方ができる名作である。

小学6年生と50代主婦の視点から語られ、ジャストに読みそうな年代の主観をあえて(?)はずしていることで、あくまで客観的にそれぞれのキャラクターに感情移入できそうで、そんなところがおもしろい。

家族のありとあらゆる事象が詰まっていて、感慨深くもなるシーンも多々ある。

親子の、夫婦の、家族の、兄弟の、友達の、恋の模様を、葛藤を、対立を、交流を描きながら、留学生ボラージュは、そしてそれぞれ自身は、いったいなにを得、なにを家族に残していくんかなぁ。という物語。

まさに、「ほれてまうやろー!」のごとくである。大きな金木犀のある家に集まった、13人と1匹のちょっとリアルなホームドラマを描いた小説。そしてなにより、じいちゃんのかっこよさにほれてしまう。

帰る場所

愛しくて切なくて、泣けて笑える素晴らしい作品でした。しかし家を太陽にたとえるならば、この13人の帰る場所は城田家である。

家族であっても、世代の違いや性格の違いが思わぬきしみを生むこともあるけれど、そこに全く国民性と価値観が違う共産圏からの留学生がやってきて城田家はてんやわんやだ。

言うべきことはちゃんと言いながら、お互いを思いやる気持ちを持つこの大家族のぬくもりに触れられただけでハッピーになれる。普通なら脇役に甘んじているだろう犬(フック)も、しっかりと主役級の役を与えられているのもほんわかと楽しい。

ハンガリーからの留学生のボラージュの軌道は、他の家族よりもちょっと長いし、フックは最後に本当に星になってしまったけれど、それでも城田家が中心にあることに変わりはない。

家族ひとりひとりは彗星のように、結婚したり帰国したり、また独立して家を出ていったりと、現れては消える。城田の家を中心にそれぞれがおのおのの軌道で回っている輝ける星なのだ。

上は70代から下は幼児までのこの家族が、ケンカしたり泣いたり笑ったりするさまを読めば心に小さな灯りがともることうけあいだ。

家族の形態はときどきに変化する。12人と犬一匹の大所帯の家族がハンガリーからの留学生を迎えて、共に生活する3年間の物語。