長野まゆみ

少年アリス

夜の学校に現れた迷いの園、中庭の噴水で季節がすれ違う時、秋の使者が運んできた。群青天鵞絨色のメルヘン。第25回文芸賞受賞作。

少年アリス (河出文庫)少年アリス (河出文庫)
長野 まゆみ

野ばら (河出文庫―BUNGEI Collection) 猫道楽 (河出文庫) 鉱石倶楽部 (文春文庫) 夏至祭 (河出文庫) 夜啼く鳥は夢を見た (河出文庫―BUNGEI Collection)

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参考レビュー

少年たちの不思議な世界

二人は、中味を刳り貫いた烏瓜に螢星を入れ、それを提灯として、理科室を探検しようとします。粋な会話や、少年独自のルールなどによって、築きあげられているのでしょう。

少年=鳥への見立ても、その不思議な空間作りに一役買っています。そこで二人が見たものは...。また、旧仮名遣いを多用し、現実から異世界にトリップしたような雰囲気を醸し出しています。

蜜蜂が兄さんから借りた、36色の色鉛筆を取りに行くのです。長野まゆみの描く少年たちは、独特の世界を構築しています。

睡蓮の開く音がする月夜に、蜜蜂とアリスは学校へ忍び込みます。文字によって構築される小説の世界を存分に味わえる作品です。

長野まゆみデビュー作

比較的読みやすく、薄いので長野まゆみ入門には最適の一冊だと思います。とても綺麗な書き出しに圧倒され「もうここだけで充分」って気分になり、なかなか読み出せませんでした。

夜の学校が舞台なのですが、そこはただの学校ではなく全くの異世界。そしてその不思議の国に主人公の少年たちは(部外者であるにも拘らず)どこか溶け込んでいるようで、だからなおさら不思議な気分になります。

キャロルの不思議の国とはまた違った形の不思議の国なのです。それはまるで起きたまま誰かの夢を覗き込んでいるかのような気分です。

でも読み始めると不思議な展開、幻想的なイメージが次々に繰り出され、どんどん引き込まれていき、文字通り一気に読み終えてしまいました。