奥田英朗

最悪

不況にあえぐ鉄工所社長の川谷は、近隣との軋轢や、取引先の無理な頼みに頭を抱えていた。銀行員のみどりは、家庭の問題やセクハラに悩んでいた。

和也は、 トルエンを巡ってヤクザに弱みを握られた。無縁だった三人の人生が交差した時、運命は加速度をつけて転がり始める。比類なき犯罪小説、待望の文庫化。

最悪 (講談社文庫)最悪 (講談社文庫)
奥田 英朗

邪魔(上) (講談社文庫) 邪魔(下) (講談社文庫) 真夜中のマーチ (集英社文庫) 家日和 (集英社文庫) 空中ブランコ (文春文庫)

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参考レビュー

いっきに濁流にのまれるような

読み始めたとき三人の主人公で話が進むのを見て最後に三人が交錯して行くところまでは予測がつきましたが、予想の斜め上を行く交錯の仕方には驚かされました。読後の爽快感は他の犯罪小説と比べ比類のないものであると言えよう。

年齢、職業、社会的地位の違う三人が日々の生活の中で苦悩し追い込まれていく、その描写は現代社会の煩わしさを端的に描き出し、その描写があるからこそ後半の怒涛の展開に読者はわくわくし引き込まれていくんだなと思えた。

しかも、600ページ越えというなかなかの長編であったのにも関わらず退屈させない展開はさすがだなと。

物語の持っていきかたの節々には少々腑に落ちないところもあったかもしれないが、そういう引っ掛かりすら全て吹き飛ばす話の勢いには作者のエンターテイナーとしての才能の片りんを目の当たりにした気分である。

とても怖い話でした

当方は、40台半ばです。一つ一つの問題は、時間をかければ解決できただろうに、忙しさのため、先送りして事が大きくなる。たぶん、夢も希望もある20才台人には、この本はただの親父が落ちていく暗いつまらない話でしょう。

ですが、せめて、子どもには少しでもいい暮らし、いや、現状維持の暮らしをさせてあげたいと願ってしまいます。登場人物の一人とほぼ同じ年代です。

もがいてもがいてさらに悪い方へ行ってしまいます。その過程に恐怖を感じました。工場経営者では、ありませんが、小さく小さくやってきた小市民です。「最悪」「邪魔」「無理」と続けて読んでしまいました。

守るべきひとがいると、この本の恐怖が感じられます。

もう先も見えています。いずれの自分の生活を守ろうとして落ちていく物語です。私も面白く一気に読んでしまいましたが、知人には勧めたくない。自分の足元はいとも簡単に壊れてしまうものが実感します。

人間のサガで、面倒なことは先送りしたいというのは誰でもありますものね。登場人物である川谷さんも同じような人です。ですが、ちょっとしたボタンのかけ違いで蟻地獄に落ちていきます。