恩田陸

蛇行する川のほとり

演劇祭の舞台装置を描くため、高校美術部の先輩、香澄の家での夏合宿に誘われた毬子。憧れの香澄と芳野からの申し出に有頂天になるが、それもつかの間だっ た。その家ではかつて不幸な事件があった。

何か秘密を共有しているようなふたりに、毬子はだんだんと疑心暗鬼になっていく。そして忘れたはずの、あの夏の 記憶がよみがえる。少女時代の残酷なほどのはかなさ、美しさを克明に描き出す。

蛇行する川のほとり (集英社文庫)蛇行する川のほとり (集英社文庫)
恩田 陸

黒と茶の幻想 (下) (講談社文庫) 黒と茶の幻想 (上) (講談社文庫) ネバーランド (集英社文庫) 黄昏の百合の骨 (講談社文庫) ドミノ (角川文庫)

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参考レビュー

飽きさせない長編

実際の高校生というのはもっと無邪気なものだと思うので、ここに出てくる女の子たちはちょっと現実離れしてますけどね。登場人物の名前の付け方も素敵だけれど、少女と女性の間をまさに泳いでいる世代を実に的確に表現しているなあと思います。

だからこそ、より美しいと感じるのだと思います。

この際、謎解きはオマケでしかなくて、女の子たちがほんとうに“美しい”と思う。

私は普段人生をやり直したいと思うことはないのだけれど、恩田陸の作品を読むと(『夜のピクニック』とか『麦の海に~』とか)、どうにももう一度高校生をやってみたくなる。いつもながら、この独特の世界観に魅了されました。

夏の一瞬を切り取った絵の中に自分もいるような感じがします。ただ美しいだけじゃない、どこかにほんのり”毒”をはらんだ少女たち。

素敵な作品です。

私は、冬真っ只中にこの作品を読みました。冬なのに、夏の情景が、夏の匂いが、夏の暑さが、夏の光がぶわーっと、私に迫ってきました。夏休みに合宿をする少女達。

文章や会話のひとつひとつが、丁寧に選ばれた言葉で、丁寧に積み重ねられています。冬だからこそ、だったのかもしれません。素敵な本です。かつて少女だったことのある私はこの作品を、懐かしい気持ちで読みました。

夏のお話しです。その懐かしむ気持ちと、夏を思う気持ちが何となく似ていたのかもしれません。少女特有の目線・葛藤・感情・決意、どれもに静かに納得し、懐かしさを感じました。

ミステリー部分はこれらのことを表現する「手段」に過ぎないような気すらします。

「少女から大人になる一瞬」について書かれた作品をたくさん読んできたはずなのですが、これ程自然にすんなり自分の中にはいってくることは、今までになかったです。

その積み重ねによって、「少女」が描かれています。本を閉じてなお、作品の香りがほどよくまとわりつきます。