柴田よしき

聖なる黒夜〈上〉

東日本連合会春日組大幹部の韮崎誠一が殺された。容疑をかけられたのは美しい男妾あがりの企業舎弟…それが十年ぶりに警視庁捜査一課・麻生龍太郎の前に現 れた山内練の姿だった。あの気弱なインテリ青年はどこに消えたのか。

殺人事件を追う麻生は、幾つもの過去に追いつめられ、暗い闇へと堕ちていく―ベストセ ラー「RIKO」シリーズから生まれた究極の魂の物語、ついに文庫化!

聖なる黒夜〈上〉 (角川文庫)聖なる黒夜〈上〉 (角川文庫)
柴田 よしき

聖なる黒夜〈下〉 (角川文庫) 私立探偵・麻生龍太郎 (角川文庫) 月神(ダイアナ)の浅き夢 (角川文庫) 聖母(マドンナ)の深き淵 (角川文庫) RIKO―女神(ヴィーナス)の永遠 (角川文庫)

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参考レビュー

ミステリで警察小説で、極上の恋愛小説

私は、これを読んだ後に緑子シリーズとハナちゃんシリーズを手にしました。そして、山内を闇の世界へ突き落とす原因の一端を握ったとも云える刑事・麻生の苦悩や懺悔も。人間の業(ごう)だとか人と人との縁(えにし)だとかを、まざまざと見せ付けられた、という感じです。

そして、再生は?同性愛的な表現が随所に出てきますので、苦手意識のある方や興味のない方は手を出しにくいのかもしれませんが、ぜひ、多くの方に読んで欲しい。壮絶ともいえる愛憎が、ページを繰るたびに溢れ出してくるのです。

愛で救えるか。それも、哀しみや苦痛の淵から掬い上げるような愛ではなく、もっと破滅的な愛。もちろん警察小説としてもすごく魅力的で、最後まで飽きさせず一気に読ませる勢いがあります。

その部分だけに捉われてこの本を読まずにいるのは、とても勿体無いような気がするのです。

因みに、同作家さんの緑子シリーズから派生した作品ではありますが、この「聖なる黒夜」からでもまったく問題なく入れます。

「ある事件が原因で、理不尽に闇の世界へ転落することになった青年」という、一見すると感情移入しにくそうな山内の激情が、読むたびに身を刺すように伝わってきます。

私がこの本を手に取った切欠は、某雑誌で「匂い系(BLテイスト)」として紹介されていたからなのですが、とてもそんな生やさしい表現では足りません。

BLというよりは、セクシャリティやジェンダー、愛の在り方に深く切り込んだ作品となっています。物語(シリーズ)間の、登場人物のリンクも魅力の一つですよ。

もともとBL小説は好んで読んでいましたが、もう愉しんでは読めなくなるかもしれない…とまで感じました。リズムというか臨場感があるので、長編ではありますが難なく読めてしまいます。

このあたりは、効果的な改行も手伝っているかな、と思えます。贖(あがな)いと赦(ゆる)しは、堕ちていく其の先にあるか。それでも微かな温もりを残す、不思議な読後感をもたせる作品でした。

出会えてよかったと思える物語。

是非読んでみてください。悲しいような優しい気持ちになれる物語です。

聖なる黒夜はすでに持っていたのですが、文庫になると聞きためらいなく買いました!…しかも、この文庫本には限定短編が!!!聖なる黒夜を知ったのが最近の為、諦めていたんですが…凄く嬉しかったです!

この短編の為だけでも本を買う価値がありますが…本編ももちろん素晴らしい!私は練と龍太郎の虜になりました。

とくに山内練というキャラクターに出会えて本当に幸せです。