椎名誠

哀愁の町に霧が降るのだ〈上巻〉

脚本学校に通い、小さな雑誌社でアルバイトをしている椎名誠、大学生の沢野ひとし、弁護士をめざす木村晋介、唯一の給料取りイサオ。東京のはずれ、江戸川 区小岩の中川放水路近くにあるアパート「克美荘」の、昼でも陽の差さない汚い六畳の部屋で、四人の男達の共同生活がはじまった…。

椎名誠とその仲間達の,悲しくもバカバカしく、けれどひたむきな青春の姿を描いた長編。

哀愁の町に霧が降るのだ 上 (小学館文庫)哀愁の町に霧が降るのだ 上 (小学館文庫)
椎名 誠

哀愁の町に霧が降るのだ 下 (小学館文庫) 新橋烏森口青春篇 (小学館文庫) ここだけの話 (PHP文芸文庫) おれたちを笑うな! わしらは怪しい雑魚釣り隊 (小学館文庫) さらば新宿赤マント (文春文庫)

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参考レビュー

椎名誠のルーツを知る

作家、椎名誠が仲間たちと過ごした青春時代を書き綴った、本人曰く「他伝的バカ話」この書き下ろしを手がけることになったいきさつから始まり、雑誌編集社時代、学生時代、アルバイト時代、ぶらぶら時代、正社員時代の話と、執筆に行き詰まって編集担当者の「クサリガマぶん回し」的な催促にさいなまれる現在の話とがぐるぐると織り交ぜられながら語られていく。

その時間軸の配列はまったくでたらめのように見えるが、なぜか読むものをひきつけて離さない。

ユーモアにあふれ、あらゆることをまったく包み隠さない語り口で、読了後には椎名誠のはちゃめちゃ青春時代をどっしりと追体験したかのような充実感があった。

椎名誠のルーツに触れることができる作品。

絶品

生粋の椎名誠ファンには怒られるかも知れないが、この人ほどエッセイ含めたノンフィクションが素晴らしく、その割にフィクションの作品が微妙な作家も珍しいと思う。ノンフィクションだから、それがわかっているから強烈に面白い。

そしてこの作品は、その素晴らしさに溢れている。

フィクションだったら「そんな奴居ないよ」と言いたくなる様な個性が全編にてんこ盛りだ。村上春樹と丁度逆だ。

何とも贅沢な話ではないか。

椎名誠という類い希な人物から、酒場で爆笑しながら昔話を聞いている、そんな気になる作品だ。とにかく面白い。