真保裕一

奪取(上)

1260万円。友人の雅人がヤクザの街金にはめられて作った借金を返すため、大胆な偽札作りを2人で実行しようとする道郎・22歳。パソコンや機械に詳し い彼ならではのアイデアで、大金入手まであと一歩と迫ったが…。

日本推理作家協会賞と山本周五郎賞をW受賞した、涙と笑いの傑作長編サスペンス!

奪取(上) (講談社文庫)奪取(上) (講談社文庫)
真保 裕一

奪取(下) (講談社文庫) ホワイトアウト (新潮文庫) 連鎖 (講談社文庫) 震源 (講談社文庫) 灰色の北壁 (講談社文庫)

by G-Tools

参考レビュー

真保裕一の最高傑作

真保裕一作品は数多く読んできたが、結局「奪取」を超える作品には出会えていない。

当時に比べて紙幣作りの技術も大幅に向上しているだろうから、今読むとどうなのか?という不安も残らないではないが、面白さは不変だろうから、真保裕一の何から読もうか?とお考えの方には「奪取」を熱烈にお薦めする。

またこんな感じの作品書いて欲しいなと思う。

どちらかというとかつて人気を二分していた東野圭吾に近いようなイメージがある。ちなみに文体ではシリアスタッチの多い真保裕一作品の中では異色の部類に入ると思う。

もう13,4年前に読んだので細かい内容まで覚えていないが、偽札作りをする主人公たちを応援しながら一気に読み進めた記憶がある。

クライム・ノベルの最高峰

重厚で丁寧な文体でしか書けないと思っていたのだが、それは誤解だったようだ。ノリの軽い会話、割とスピーディーな展開。ダブルでエンターテインメント系の文学賞を取ったのもうなずける。

この作家らしく、かなり長い物語なのだが、この作品ばかりは文句のつけようがない。その1人がヤクザに1200万円の借金を作ってしまった。

頭脳的な犯罪、アクション・シーン、そして緻密な構成。エンターテインメントとしては最上級と言ってもよい。Page Turnerとは、こういう作品のことを言うのであろう。

しかし、これだけならこれまでのクライム・ノベルにもありそうな展開である。文体、テーマ、そして読みやすさ。

すべてが相まって、この小説を一流のクライム・ノベルにしている。この作家にしては珍しく、文体が軽く、読みやすい。そこで2人が考えたのは…偽札作りである。そこからもう一ひねりを加えなければ、文学賞など取れない。。

計画した犯罪を実行するために準備をするのだが、その様子が実に細かく描かれている。この作家にしてはホント珍しい。これこそ、クライム・ノベルの真骨頂である。主人公たちは、いいアイデアを考え出し、それを実行に移していく。

今までの真保作品からは予想できない小説である。