住井すゑ

橋のない川〈1〉

級友が私だけを避け、仲間はずれにする。差別―その深い罪について人はどれだけ考えただろうか。故なき差別の鉄の輪に苦しみ、しかもなお愛を失わず、光を かかげて真摯に生きようとする人々がここにいる。

大和盆地の小村、小森。日露戦争で父を失った誠太郎と孝二は、貧しい暮しながら温かな祖母と母の手に守ら れて小学校に通い始める。だがそこに思いもかけぬ日々が待っていた。

橋のない川〈1〉 (新潮文庫)橋のない川〈1〉 (新潮文庫)
住井 すゑ

橋のない川 (2) (新潮文庫) 橋のない川〈3〉 (新潮文庫) 橋のない川 (4) (新潮文庫) 橋のない川〈7〉 (新潮文庫) 橋のない川 (5) (新潮文庫)

by G-Tools

参考レビュー

全ての日本人に読んでほしい

差別の嵐は、理不尽で、むごたらしく、国を挙げてのいじめという構図は、日本人として恥ずかしく不幸な過去を見せられるようで心が痛みます。

でも、何十何百という誠太郎や孝二の苦しみが、今のこの社会の礎になっているのだということを忘れてはいけないのだと思います。

明治、大正の被差別部落の人々の生活を描く本書ですが、日本の歴史のおぞましい陰の部分である「差別」をテーマにしているにもかかわらず、不思議と暗さがないのは、大らかで豊かな心のぬいとふで、支え合いながら健気に成長していく誠太郎と孝二の兄弟という、主人公一家の大きな家族愛に全編が貫かれているからでしょうか。

奈良盆地の美しい田園風景の描写も秀逸で、自分の中に眠っている原風景への郷愁をかき立てられます。

しかし、そんな状況でも、逞しく、壁を乗り越えながら真っ直ぐに生きていこうとする人々。

約100年を経た今、私たちの周りにはそうした差別は見られないし、多くの若者はそんなことがあったことすら知らないでしょう。

必読書

このような本があるおかげで差別の理不尽さを疑似体験できるのだと思います。

私の住んでいるところはこの本のような差別は表面上はなかったと思う(ただ、川を挟んで橋一本だけでつながって、隔離されている風なのは差別の名残だろうけれども)のですが、関西の方では未だに部落差別が残っているそうです。

この本は「部落差別問題」を語る上で外すことは出来ない本です。

是非読んでください。小学校時代の友達に旧部落に住んでいる友達がいたこともあって、この本をより身近に考えることが出来ました。

いわれのない差別を受ける人たちの気持ちを少しでも理解できる本です。