高樹のぶ子

透光の樹

25年ぶりに再会した中年の男女の激しく一途に燃える愛。すべての現実感が消えるほどの〈結晶のような〉物語。谷崎潤一郎受賞作

透光の樹 (文春文庫)透光の樹 (文春文庫)
高樹 のぶ子

風の盆恋歌 (新潮文庫) 時雨の記 (文春文庫) 光抱く友よ (新潮文庫) 飛水 (講談社文庫) 冬の伽藍 (講談社文庫)

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参考レビュー

大人の「純愛」小説

小道具として登場する刀子に象徴されるように、二人が「愛」を研ぎ澄ましてゆく過程が見事に表現されていると思います。

物語の舞台になっているのは鶴来(剣)という北陸の町で、終盤に出てくる富来(研ぎ)の町と合わせて、刀鍛冶の500年の歴史と主人公たちの2年2ヶ月の恋物語が重ねあわされているように思います。

物語の中で「「恋愛」とはなにか?」を二人が議論する場面が出てきますが、最後に登場する娘眉の結婚生活と対比すると作者の考えている答が見えるような気がします。

女性の情念を見事に表現している作品で、大人のある意味「純愛」小説と言えるかも知れません。この小説も素晴らしいのですが、映画のほうもかなりなものでした。

原作に忠実なだけでなく、見事に行間を表現している素晴らしい脚本だったと思います。

究極の恋愛小説

高樹のぶ子さんはいつも、中年男女の恋愛の肉と心を、美しく、力強くかつ繊細な描写で描き切っていて、素晴らしいと思います。

末期癌に犯された郷の身体がこの世から消え去った後も、彼の感覚は千桐の中に埋め込まれ、その後崩壊していく千桐の精神の中に永遠に閉じこまれます。しかし、この小説に勝ることは絶対にないでしょう。

大切な人との出会いのように、人生でこの小説に出会えて本当によかったと思います。映画化されましたが、地元の映画館では上映されず、残念です。

初めてこの小説を読んだ日、何度も何度も余韻を反芻し、涙がとまりませんでした。氏自身は、「永遠に続く恋愛なんてない」と婦人公論のエッセイに書いておられましたが、この作品で描かれているのは永遠の愛です。

たとえ彼女の肉体が滅びても、二人を見てきた六郎杉はずっとそこに存在するのです。この美しさが映像でどこまで表現できるのか、ぜひ見てみたいです。