高村薫

李歐

惚れたって言えよ―。美貌の殺し屋は言った。その名は李欧。平凡なアルバイト学生だった吉田一彰は、その日、運命に出会った。ともに二十二歳。しかし、二 人が見た大陸の夢は遠く厳しく、十五年の月日が二つの魂をひきさいた。

『わが手に拳銃を』を下敷にしてあらたに書き下ろす美しく壮大な青春の物語。

李歐 (講談社文庫)李歐 (講談社文庫)
高村 薫

真夜中の相棒〈新装版〉 (文春文庫) 聖なる黒夜〈上〉 (角川文庫) 神の火〈上〉 (新潮文庫) 神の火〈下〉 (新潮文庫) リヴィエラを撃て〈下〉  新潮文庫

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参考レビュー

不思議な・・・

正確には不思議と嫌悪させられる事が無い。ただし物語を通して結末まで、「李歐」の方が面白いとは思いますが。確かに同姓愛的な要素は、この作品でも他の高村作品でも多少なりとも入っている事が多いのですが、けれどそれを感じさせない。

「李歐」が改めて加筆修正をおこない手直しされている作品だとは知らずに購入し、読み始めてみて気がついて事実を知ったという状態だったのですが、結構大胆に改稿されてる所があったり若干の登場人物の設定変更もあるので、読み比べも面白いと思います。

男女関係無く、この小説の魅力は主人公達の生き様だと感じます。高村作品の中では珍しい結末だけど、たまには、こんな結末もありだな。

俺には何故か段々と、それが普通の事の様に思えてくるのがちょっと怖い(笑)たぶん、人間関係の描き方がすごく奥が深いからなんだろうけど。

実は、この「李歐」の元になっている「わが手に拳銃を」をかなり前に読んでいます。高村薫の小説は好きでほとんど読みましたが、細部や社会環境は極めて現実的でありながら、内容は現実的には考えられない、けれどカッコイイ。

結末に関して言えば「李歐」で良かったと思ったし、俺個人的にはこの作品の方が納得もできるしスッキリしました。

というのが男の俺から見た感想です。…因縁も含めて人と人が繋がっていく中に人間味を出しながら、枝葉のようにさらに広がりを見せて、そして再び繋がっていく。

美の極致

読んで絶対に損はない一冊です。桜は男の花だと言われていますが、朧な月夜に浮かび上がる夜桜の妖しさがこの本には溢れている気がします。高村薫作品の中で最も好きな作品でもあります。

桜の季節になると必ず読みたくなる小説、それが李歐です。

最高の口説き文句がこの小説の中にはあちらこちらに散りばめられていますが、冷酷にも見える李歐の奥に隠されている炎と彼の纏う大陸の風が、どの言葉よりも一彰の心臓を撃ち抜いたのではないかという気がします。

同性愛的な要素が多分に含まれていますが、もちろん現実世界のリアルさではありません。

高村薫が極上の色彩で描き出した二人の人物が男女の枠をも超えた情熱で互いの心を捉え、どれほどの時間と距離が離れようとも想いの一点で繋がっている場面には、ひとたび運命で巡り会ってしまったならばその鉤爪からは決して逃れられないのだと思わされます。

血で濡れているかのような美貌の殺し屋・李歐と、自分自身のことさえ掴みかね曖昧さの中で日々を生きている一彰が出会い、魂で惹かれ合う物語。高村薫の美しく艶やかな情景描写にハッとさせられます。