田辺聖子

言い寄る

乃里子、31歳。フリーのデザイナー、画家。自由な一人暮らし。金持ちの色男・剛、趣味人の渋い中年男・水野など、いい男たちに言い寄られ、恋も仕事も楽 しんでいる。

しかし、痛いくらい愛してる五郎にだけは、どうしても言い寄れない…。

乃里子フリークが続出した、田辺恋愛小説の最高傑作。

言い寄る (講談社文庫)言い寄る (講談社文庫)
田辺 聖子

私的生活 (講談社文庫) 苺をつぶしながら (講談社文庫) 人生は、だましだまし (角川文庫) 孤独な夜のココア (新潮文庫) うたかた (講談社文庫)

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参考レビュー

秀逸の三部作

仕事も充実させつつ、もちろん男も欲しい。どうしようもなく好きで手に入れたい男と、好いてくれる男。

会話のテンポと男女のかけひきを楽しめる作品です。ロマンチック過ぎず、現実にころがっていそうな面々が魅力的。

田辺聖子作品はほとんど読破していますが、中でも印象に残る作品で時間をおいて何度も読み返しています。いずれも終始、関西弁ですがアンチ関西の人も是非読んでほしいです。

主人公の女性は決して若過ぎず、かといって中年にはまだ早い。この作品の後編として「私的生活」「苺をつぶしながら」と続きます。

世界観変わるよ。

主人公の意識のうちと科白の隔たりのなさや気分の移り変わり。主人公と五郎の関係が主題となっているとみて読んでいたが、私にははじめから主人公と剛の恋物語であり、しかも女たらしである剛の主人公を想う痛々しい気持がリアルに伝わってくる。

そしてただの「結局1人でいい」というありがちなラストに納まらず、読後は私自身にもともとあった絶望感の底が少しずつ浮いていくようで世界観が変わったよう。

今世界や人間関係(特に異性関係)がつまらない、と感じている人に、絶対お勧め! 。それは話の内容そのものもあるし、この方の世界のスケッチの仕方のせいでもある。この小説を通して見える世界そのものに、私は恋をした。

自分の意識と寸分違わずするすると読めてしまう。そして完全に魅せられ、夢中になってしまった。

田辺聖子氏の小説を読むのは始めてだったが、昔に書かれたとは思えないほど新しく感じる文章の描き方。これは3部作のはじめの物語。