柄刀一

密室キングダム

1988年夏、札幌。伝説的な奇術師・吝一郎の復帰公演が事件の発端だった。次々と連続する、華美で妖艶な不可能犯罪!吝家を覆う殺意の霧は、濃くなるばかり。

心臓に持病を抱える、若き推理の天才・南美希風が、悪意に満ちた魔術師の殺人計画に挑む。

密室キングダム (光文社文庫)密室キングダム (光文社文庫)
柄刀 一

モノクローム・レクイエム (文芸書) 鴉 (幻冬舎文庫) メルカトルと美袋のための殺人 (集英社文庫) 密室蒐集家 (ミステリー・リーグ) ペガサスと一角獣薬局 (光文社文庫)

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参考レビュー

密室ミステリの傑作

文章は平易で分かりにくいところもない。とにかくタイトルからして挑戦的だし、その心意気や良し、というところだ。密室ということもあるが、謎の提出がストレートであり、不可能興味満点のところと、それがきれいに解決されるところが良い。

そしてその意気込みは、みごとに成功している。

大作だから、手にとるのに躊躇するかもしれないが、かなりスラスラ読めるから、意外と早く読み進められる。この手の作品が好きな、私のような本格マニアにとって、本書は極上の一作である。

本格好き、密室好きは一読に値する作品である。でも、それでも徹底して密室にこだわったミステリは、今どき珍しい。著者の作品は幾つか読んだが、私の肌に合うものと合わないものとがある。

たしかにロジックに甘いところもあるし、トリックにも強引なところがある。密室オンパレードの本書は、密室好きにはたまらない作品であり、いまのところ著者の最長、最高のミステリである。本作は、肌に合った。

流石の柄刀作品

いや、柄刀さんの筆力に脱帽です。いや、本当に面白かったです!流石です。やはりそもそもの元凶は父親ではないのか、という思いがしてならないのです。

次々と現れる密室に一気に読んでしまいました。それが美希風の涙を誘ったのでしょう。そうすれば、このような悲劇はもしかしたら避けられたかも知れない。亡くなる寸前に美希風に告げられた言葉は哀しいです。

全ては父親のある意味の弱さ故だったのかも知れません。

その言葉は当時の美希風の心理ともどこか同調するようにも思えます。

吝家の三つ子のそれぞれの運命が、結局は父親を含めた下らない因習のせいだと思うと、たまらない腹立たしさにおそわれます。何より三男の三郎が哀れでなりませんでした。

立派な吝家の一員でありながら、消されてしまった、隠されてしまった存在。読み応えがありました。私は以前からの南美希風ファンですが、心臓移植以前の美希風の活躍は初めてだったので、ある種特別の感慨がありましたね。

どうせ余所に移るのなら、何故父親はその際に真実を語って三男も同行しなかったのでしょう。