山田正紀

火神(アグニ)を盗め

古代、インド=ヨーロッパ人が崇拝していた神にちなんで名づけられた、最新鋭の原子力発電所―火神「アグニ」。日本の商社からセールス・エンジニアとしてインドへ出張していた工藤篤は、偶然「アグニ」のある秘密を知ってしまう。ヒマラヤ山中の鉄壁の要塞に隠された「アグニ」の秘密をめぐる、CIA、中国情報員との壮絶なる死闘に巻き込まれて行く彼の運命は果たして…。緻密な構成と迫真のディテールで描く超冒険小説。

火神(アグニ)を盗め (文春文庫 (284‐3))火神(アグニ)を盗め (文春文庫 (284‐3))
山田 正紀

贋作ゲーム (文春文庫 (284‐2)) 崑崙遊撃隊 (角川文庫) チョウたちの時間 (角川文庫) 氷河民族 (角川文庫) 宝石泥棒 (角川文庫)

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参考レビュー

サラリーマンの意地を見よ!

ミステリ的な伏線回収と、意表を突く突破作戦、エンターテイメント映画ではお決まりのラストの大爆発、なにより平凡なサラリーマンが執念で奇跡的な成功を収める、という胸がすく痛快な娯楽作品としてまとまっているのが良いですね。レーダー、触圧感知装置、堀に放されたワニ、熱感知センサー、音響センサーなどなど、鉄壁の守りをいかにしてくぐり抜けるのか。

いくらその原発を売り込んだ総合商社の社員だとはいえ、いちサラリーマンが異常なまでの厳戒警備態勢の原発“アグニ”に忍び込めるものか?しかも、会社がただひとり逃げ延びてきた工藤と一緒に再度突入するメンバーとしてが選んだのは、プロとはいえ、会社の息の掛かった──工藤の成功を妨害しようという命令すら与えられた!──須永を除けば、平凡な万年係長の仙田、宴会係の桂、社史編纂の佐々木、というまさに絶望的な面々…。まさにこんな状況では万に一つの成功の可能性すらありません。

『謀殺の弾丸特急』を代表とする、素人対プロの対決、絶望的な状況からの逆転劇を描かせたら右に出る者はいない山田正紀の秀作です。

今回のミッションはインドのヒマラヤ山系に作られた原発にしかけられた爆弾を、潜入し撤去する、というもの。

SF作家が書いたスパイ小説としては世界一

「スパイはカスだ、カスが真っ当に生きている人間に勝てるわけがない」という名セリフを主人公は吐きます。平凡なサラリーマン達がプロスパイを敵に回して大活躍するという、冴えないリーマンのオジサン達に勇気と希望を与えた大傑作。

ラストで落語を武器にするシーンは凄いカタルシスである。ギャグじゃないんだよ、シリアスな感動的な作品である。

サラリーマンを馬鹿にするんじゃない。表紙がネタバラシしているので書いていいと思うが、宇宙服などの独特の装備でプロスパイに対抗するのだ。

身体能力ではプロスパイに勝てるわけが無いし、武器の扱いももちろんプロスパイには劣る。