横溝正史

八つ墓村

鳥取と岡山の県境の村、かつて戦国の頃、三千両を携えた八人の武士がこの村に落ちのびた。欲に目が眩んだ村人たちは八人を惨殺。以来この村は八つ墓村と呼ばれ、怪異があいついだ…。

八つ墓村 (角川文庫)八つ墓村 (角川文庫)
横溝 正史

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参考レビュー

ロマンあふれる冒険小説

ヒロイン典子の主人公への一途な愛情や先を見通す確かな考え方や行動、主人公の姉である春代のつつましやかながらもしっかりした態度には感動しました。もう一つ特筆すべきは登場人物の女性の性格の描き方が非常にすばらしい点です。

映画やドラマで有名な「八つ墓村」の原作本です。

映画やドラマを見たけれども本作を読まれていない方にはぜひ一読をおすすめします。主人公辰弥が幾多の試練に遭遇しながらそれを乗り越えて行くという冒険小説の色彩が大変に強い作品です。

他の方々もコメントされていますが、本作は犯人探しを前面に押し出したミステリー小説とは趣が異なります。

原作本には映画やドラマとはまた違った魅力があります。まず第一に陰惨な歴史と旧家の因習がおりなす独特な横溝正史ワールドの中で、主人公が必死に自分の生き場所を探そうとする姿には目を離せません。

過去の落ち武者の財宝探しの点なども非常にロマンのあふれる冒険小説だと思います。本作は恋愛小説としても第一級の作品だと思います。

登場人物が好き

横溝作品は本作の他に「獄門島」、「本陣」を読んだのみですが、本作が一番おもしろいと思いました。読んで損はない作品ではないでしょうか。

登場人物たちは運命に翻弄されながらも、感情豊かに、より能動的に行動しており読んでいて気持ちのいいものでした。

封建的色合いの強く残る山村、村に伝わる忌まわしい過去、そこで繰り広げられる凄惨な殺人事件、といった設定はおなじみですが、重苦しい前半部分から、次第に冒険活劇的な展開になっていき、最後はなにはともあれめでたし、めでたしで終わり、ほっとできる内容です。

特に、主人公の第一印象が「醜い女」であった典子が、驚くような大変貌を果たし、主人公をしのぐ活躍をするという展開は、個人的に大変好きです。

それに何と言っても、村の地下に広がる大鍾乳洞を舞台にした大追跡、大逃亡は最後までどきどきはらはらさせられ、少しも飽きません。

金田一はあまり活躍せず、存在に違和感がありましたが、謎解き役としてやはり欠かせない人物であったろうと思います。