横山秀夫

第三の時効

殺人事件の時効成立目前。現場の刑事にも知らされず、巧妙に仕組まれていた「第三の時効」とはいったい何か!?刑事たちの生々しい葛藤と、逮捕への執念を 鋭くえぐる表題作ほか、全六篇の連作短篇集。

本格ミステリにして警察小説の最高峰との呼び声も高い本作を貫くのは、硬質なエレガンス。圧倒的な破壊力で、 あぶり出されるのは、男たちの矜持だ―。大人気、F県警強行犯シリーズ第一弾。

第三の時効 (集英社文庫)第三の時効 (集英社文庫)
横山 秀夫

動機 (文春文庫) 陰の季節 (文春文庫) ルパンの消息 (光文社文庫) 臨場 (光文社文庫) 深追い (新潮文庫)

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参考レビュー

清張を超えることができるのは横山秀夫のみ!

最後のどんでん返しもさることながら、登場人物の造形がおもしろく、ストーリーがとにかくよく練られている。横山秀夫の作品を読んでいると、推理小説の巨匠であった松本清張の影がちらつく。

発端は清張の名作短篇「張り込み」を思わせる。松本清張賞の受賞者でもあるし、清張と同じく新聞社で勤めていた経験もあり、やはり清張と同じく作家としてはあまり早いデビューではなかった。

一番好きなのは「第三の時効」。というか、清張の良い部分を現代に持ちこみたいのかも。

宮部みゆきの初期のころの短篇もちよっと清張っぽいのがいくつかあるが、横山秀夫の場合は緊張感あふれる文体、登場人物を動かすサスペンスフルな動機(清張は社会的な地位にある人の弱みというのが多いが)など、清張を小説の師としているようだ。このままどんどんと書いてください。

横山秀夫は清張の初期短篇がそうであったように、人間の心理から繰り出されるサスペンス、ちょっと意表をついた渋いストーリーなどが圧倒的にうまく、ストーリーの着眼点がよいためにとにかくページをめくらせるのだ。

これからをまだまだ期待できる作家です! 。そして、短篇なのに濃密されている深い物語で、大人が楽しめる内容。清張の正統なる後継者。

清張のいい部分をそのままに(サスペンス、短篇らしいアイデア、男たちの心理)、弱かった部分を強化した(練られたストーリー、本格的趣向の盛り込み、さわやか感)。

しかし、「張り込み」よりも格段にエンターテイメントとしてはおもしろい。現代によみがえった清張。

におい立つ

謎の解明部分もとても面白く、引き込まれます。短編一つ一つの短さもちょうど読みやすく、かつ、一つのお話にとって過不足ない分量で綺麗にまとまっており、横山秀夫さんの力量恐るべし、と思いました。

表題作以外のお話も外れなく面白いです。一つの事件に対して「主役」となる刑事がおり、それぞれ魅力的な個性を持ちつつもしっかりと感情移入させられるので非常に読みやすいです。

男(刑事)達の汗やアドレナリンがにおい立つ文章が、この作品の最大の魅力かも知れません。それほどまでに生々しくリアルな刑事達によって、しかしちゃんとドラマチックな展開で事件は解明されていきます。

おそらく、良い小説というのは、ただ文章を読むだけで映像が浮かび、音の聞こえるようなものではないかと思うのですが、それ以上に素晴らしい小説は「におい」が伴うのではないかと思います。